2025/01/09
《姫路ブロック臨床研修会》
令和6年11月17日(日)午前10時より姫路市民会館5階第1教室にて、宝塚医療大学講師の岡田岬先生にお越しいただき『消化器疾患と自律神経の関係~鍼灸治療のメカニズム~』を講演していただきました。岡田先生は鍼灸師の免許を取り、臨床現場を経て研究の道に進まれた方です。鍼灸がどのように身体に影響をもたらしているのか興味を持たれ、ラットを用いて鍼灸のエビデンスを大学で研究をされています。
■消化器と自律神経:神経系の基本では中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(体性神経系・自律神経系)の大きく二つに分かれる。そして末梢神経系は体性神経系と自律神経系に二分される。その自律神経系もまた求心性(内臓求心性神経)と遠心性(交感神経・副交感神経)に二分される。内臓求心性神経は内臓感覚を脳や脊髄へ伝える神経であり、交感神経や副交感神経と同じ神経束内を並走する。内臓感覚は臓器感覚と内臓痛覚に分かれる。臓器感覚(空腹、口渇、便意、尿意)は主に迷走神経・骨盤神経といった副交感神経を通る。内臓痛覚は主に交感神経を通る。消化管に分布する自律神経のうち、交感神経は『闘争または逃走』の機能を有し内臓の消化機能を抑制し骨格筋にエネルギーを送る。一方の副交感神経は『休息と消化』の機能を有し消化機能を昂進させる。特に内臓求心性神経は迷走神経を通っていることもあり、耳の穴付近(迷走神経が分布する)の刺激が効果的である。例えば、耳を温めることや、テイ鍼などの柔らかい刺激をすることで、自律神経を安定させ、内蔵を安定させる効果が期待できる。
■消化器に対する鍼のメカニズム:鍼刺激は胃運動にどのような影響を与えるのか?手、足などの末端部からの刺激は副交感神経を使っており、胃の運動を促進させる。逆に体幹からの刺激は交感神経を使っているために胃の運動は抑制される。具体的には『曲池や足三里』などの手足末端のツボ刺激は胃運動を促進させ、『膈兪、肝兪、脾兪』のいわゆる胃の六つ灸は体幹のツボ刺激であり胃の運動を抑制させる。よって、消化不良などの胃の動きが悪い時には曲池や足三里を使うことが効果的であり、逆に胃痛などの過剰な刺激を落ち着かせる時は胃の六つ灸を使うのが効果的となる。胃痛時に胃の六つ灸を使うのが効果的と述べたが、大学での授業時に「何故、胃の六つ灸に胃兪が入っていないのか?」という質問を学生から受けたことがある。これに関して体のデルマトームを参照にすると、Th12(胃兪)の神経支配は胃の辺りを支配をしていないことが関係していると思われる。
【報告者 姫路地区:佐藤暢彦】
2024/12/02
《第34回 加古川ツーデーマーチ》
11月9日(土)、10日(日)の2日間、加古川市役所を中心とした加古川市内にて、「第34回加古川ツーデーマーチ」が開催された。距離は20km、10km、5kmの3種の設定がされ、年代問わず参加がしやすい様設定がされていた。コースの各所に設置されたチェックポイントでも様々なイベントが開催され、会場全体としてゆったりと楽しんでいる空気が流れていた。事前の予報では荒天の可能性が示されていたが、2日間共に快晴で穏やかな日差しの中での開催だった。
今回は、スポーツマッサージに加えて、鍼での施術も参加者が選択できる準備をしていた。また、家庭でのケアのための試供品も提供いただいていたため、施術を受けた方々には施術後に渡していた。
1日目は、ゴール後のウォーカーに対する施術が中心で昼頃から終了時刻である16時頃まで約80名の方が施術を受けた。運動直後なのもあってかスポーツマッサージの希望者が圧倒的に多かった。また、過去の開催時に参加していたウォーカーのリピートも多く見られた。2日目になると、まずは両日参加のウォーカーの出発前の施術希望が増えた。中には10歳以下の児童も含まれ、身体のケアの重要性がより幅広い世代に認識されつつあるのではないかと感じさせた。また、一日目に比べると鍼での施術を希望するウォーカーが圧倒的に増えた。1日目の疲労が残った状態で2日目に参加したウォーカーが多かったようで連日の施術希望も多数見られた。鍼希望者の多くが鍼での治療を受けるのは初めてだったようだが、受けた人の多くが身体が軽くなったことを実感しとても喜んでいただけたようだった。施術中に「〇〇市で鍼灸をやっている治療院はあるの?」といった質問が出ているのも散見した。一度治療を受けたことでウォーカーの中で鍼灸が治療の選択肢に含まれるようになっていっているのではないかと感じられ、とても充実したイベントだった。
【報告者 北播磨地区:賀内淳一郎】
2024/12/02
《第49回にしのみや市民祭り》
西宮鍼灸マッサージ師会では、毎年市役所前広場で開催される西宮市民まつりへ出店しています。以前は、市民の方に無料マッサージ体験をしてもらっていましたが、スタッフ不足と費用対効果の関係で、一昨年から配布物(啓蒙チラシ、会員の施術所リスト、ツボのイラストチラシ、せんねん灸とコリスポットの試供品)のみにしていました。
今年は市民の方一人ひとりに接客をして、主訴を聞き、お灸かコリスポットを選んで体験をしてもらいました。
お灸は初めてで怖いけどやってみたいとの声が多く、65人にせんねん灸の体験をしてもらいました。ほんわりと心地よかった。家でも是非やってみたいがどこで買えるのか?昔やっていて押し入れの奥にしまっているが、出してまたやろうと思う。などの声が聞こえました。
スタッフは6名でしたが、来場者が途切れることなく接客に追われました。今年もせんねん灸とセイリンから試供品を提供してもらい、啓蒙チラシとともにお渡しし、喜んでいただけました。
セルフケア用のテニスボールマッサージ用のボールは例年とても人気で、2個連結50個と1個を150個用意し、使い方のチラシとともにご自由にお持ち帰りくださいとしたところ、またたく間になくなりました。
来年は西宮鍼灸師会と合同で出店できるよう調整していきたいと思っています。


開催日:令和6年10月26日(土)11時~16時
会員スタッフ:6名
お灸体験:65名
凝りスポット体験:45名
【報告者 西宮地区:瀧川敦子】
2024/11/06
《令和6年度 たるみ生き活き保健福祉フェア》
令和6年10月4日(金)9:30より垂水区社会福祉協議会主催の「たるみ生き活き保健福祉フェア」の一環として「はり・マッサージ体験施術」を行った。今年度からは神戸地区と垂水地区が合併したことにより神戸鍼灸マッサージ師会としての体験施術実施となった。
施術者14名(はり担当5名、マッサージ担当9名、ベッド8台(はり3台、マッサージ5台)体制で実施し、受療者数は48名(はり18名、マッサージ30名)だった。当日のキャンセルや当日申し込み等があり結果的には当所予定受療者数の体験人数となった。
私は鍼施術を担当し、6名の施術を行った(1名あたり約30分)。受療者は40代1名、50代1名、60歳以上4名とかなり高齢者層に偏った形だった。事前予約により施術枠がほぼ埋まっていたこともあり会場は盛況だった。施術させていただいた方にお聞きすると、半数以上の方が鍼施術は初めてということだった。その他の方は転居してきて鍼灸院を探しているがどこへ行けばいいかわからないという方もあった。1人あたりの施術時間は30分となっていたが、初診の上、施術後のフォローができないこともあり、効果を実感できる程度の刺激量とし、身体の動きの変化が感じられるよう動作のビフォーアフターを感じていただけるように施術を行なった。
今回、この保健福祉フェアでの体験施術にはじめて参加し、後ほど行なった垂水区社会福祉協議会の方との次年度に向けてのミーティングにも出席し、様々な検討課題があるように感じた。コロナ禍を経て、5年ぶりに再開した体験施術であったが、施術体験希望者への告知、募集方法、施術枠の設定方法や当日の運営に至るまで再検討が必要ではないかと思う。
このような各種のイベントでの体験施術やスポーツイベントにおける医療ケアの一端としてのボランティア施術は鍼灸マッサージ施術の啓蒙普及にも寄与することを期待し、できる限り参加したいと思う。また、体験施術等でご縁をいただいた方がその場だけでなく、どこかの施術院で継続して受療していただけるよう仕組みを考えたいと思う。
【報告者 神戸地区:井上和哉】
2024/10/01
《令和6年度 夏期大学講座2日目》
令和6年9月8日(日)午前の部では『アスリートのコンディショニングに東洋医学を活かす』の演題で明治国際医療大学鍼灸学部 谷口剛志先生にご講演いただいた。
アスリートのコンディショニングで『治未病』の概念を活用して精神面・肉体面・健康面をアプローチするのは、斬新的で大変良かったと思います。
アスリートのコンディショニングを主観的な指標(VAS)と客観的な指標(唾液コルチゾール濃度)で捉えて、その上で募穴診を行い、圧痛を指標にコンディショニングの変動を捉えることができるのかを検証したのは目新しい情報です。スポーツ鍼灸の発展を願います。
午後の部では『冷え性の診断と治療』の演題で関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二先生にご講演いただいた。
臨床の場面では、冷え性の主訴よりは愁訴で来院されると思います。患者の満足度向上に以下のセルフケアがヒントになります。
今回、教えて頂いた冷え性の対策でセルフケアとしては、湯たんぽを大腿部に置いて作業をすると足が冷え難い坐業でない場合、使え捨てカイロ固定用のホルダーを活用して、後頚部や肘部に当てると手の冷えの程度が軽減する。
就寝前の足三里、三陰交、湧泉への間接灸を続けると良い。

【報告者 神戸地区:伊藤傑】
2024/08/01
《令和6年度 夏期大学講座1日目》
令和6年7月14日(日) 10時30分より令和6年度夏期大学講座1日目が開催された。午前の部は【お灸堂】院長 鋤柄誉啓 先生をお招きし「灸治療院の診療及び活動のご紹介」との演題でご講演いただいた。
鋤柄先生が普段行っておられる施術のご紹介とともに患者といかに寄り添っていくかということについての工夫がよく伝わってくる講演だった。講演の中で私が印象的に感じたこととして、鋤柄先生が施術のことを「お手当」と表現されていた点と施灸による身体変化をきちんと患者と共有していた点である。医療の原点は症状に対して手を当てることから始まったと言われており、まさに、それを実践されているということだろう。また、昨今は慢性症の患者が増加しており、症状寛解にすぐに至らないケースが多いが、身体の変化をきちんと認識し、それを積み重ねていくことで身体の状態が改善していくことを丁寧に伝えておられるとのこと。患者目線で施術者が歩み寄り、患者に寄り添う施術を継続して実践されている。このようなことは施術者としてのキャリアが長くなると希薄になっているのではないだろうか。施術者としてのスタンスを再考するいい機会になったと思う。
午後の講演は【京都四条からすま鍼灸院】中島美和 先生をお招きして、「頚肩上肢症状に対する鍼治療」との演題による講演と実技供覧だった。
鍼灸施術は様々な技法、手法があり、選択肢が多いという点では強みになる一方、それらは先人の経験に基づく伝道であり、体系化されておらず、鍼灸施術の受療率が上昇しにくい要因となっている。今後はさらに基礎研究がなされ、EBMに基づく医療技術であることがもっと発信されるべきと中島先生は述べておられた。
上記を踏まえ、頸肩上肢症状の発症要因として最も多い、頸椎の退行変性を基盤とする運動器障害について、症候、疾患の成り立ち、さらには治療法を理解する上で必須となる、頸椎の機能・解剖、診察技法等についての講義が行われた。特に神経分布については詳しく解説していただき、神経へのアプローチでは、どの部位に鍼をどの方向に、どの程度の深度で刺入すれば効果が期待でき、また安全に刺鍼できるか等、非常に詳しく講義していただいた。多くの受講者が養成施設を卒業して長い時間が経過しており、また養成施設での解剖学の講義よりも詳しく、脳に汗をかいた方も多かったのではないだろうか。知識の再認識と学び続けることの重要性を再確認するよい機会となった。
また、実技供覧においてはモデル患者に対し、講義でお話いただいた刺鍼部位に実際に刺鍼し、鍼の刺入方向や深度が確認できた。今回は時間の制約もあり、視力の弱い方には触知して確認する等は難しかったが、詳しく説明をしていただきながらの実技供覧でイメージはできたのではないだろうか。
私的には解剖学の知識は有害事象を招かないためや、他の医療業種従事者との情報共有において共通用語を理解、使用することは不可欠と考えるが、本来の東洋医学の強みを活かすためには、現代医学の知識に経絡経穴や東洋医学の臓器感などが融合できてこそ本来の力を発揮できるのではないだろうか。今後の研究に期待したい。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2024/07/01
《令和6年度 神戸地区講習会》
令和6年6月16日(日) 13時30分より德岡里実 先生をお迎えして「【さとう式リンパケア】入門~「触れる」ことの深さを知る~」との演題で講義と実技指導を行っていただきました。德岡先生の雰囲気と柔らかい話し方や声のトーンから終始和やかな講習会となりました。
【さとう式リンパケア】は歯科医師である佐藤先生が顎関節症の治療の一環として行っていた咬筋スパズムに対するマッサージが起源だそうですが、接触する指の圧力を少なくした方が治療効果が高いことを発見されたそうです。触れる圧力を少なくすることで、末梢の微小循環血液量が改善され、脈管外の間質液の循環が改善されることで、筋ポンプ機能などが改善され、筋緊張が解消されていきます。間質液は神経伝達などにも関与しており、神経系の調整にもなります。
また、適度な触覚刺激はオキシトシンやセロトニンといった脳から分泌される物質の分泌を促すことも知られており、これらは「幸せホルモン」とも言われ、肉体的な不調を整えるだけでなく、人そのものを豊かにしてくれるメソッドということになります。
また、【さとう式リンパケア】では口腔、胸腔、腹腔の三つの腔を重視しており、腔を立てるよう調整をしていくそうです。上述の筋緊張を取ることは姿勢を整えることになり、正しい姿勢を取ることで三つの腔が正常な形となり不良姿勢の解消はもとより身体が緩むことで血流やリンパ還流や神経伝達などがスムーズになり本来の状態になっていくということでした。
実技のデモンストレーションにおいてはモデル患者の状態把握から施術を施した後とのビフォーアフターで状態変化がモデル患者にも体感できたようでした。また、少数グループでの実技練習においては先生にグループを巡回していただいて、多くの受講者が先生の施術を体験し、その触覚刺激量の少なさに驚嘆していました。
【さとう式リンパケア】については佐藤先生のyoutubeチャンネルにも多くの動画が掲載されていますが、この刺激量の感覚は動画ではなかなか理解できないと思いますし、また、大人数でデモンストレーションを見るだけでなく、実際に体感することの重要性を再認識した講習会となりました。今回、受講された方には是非、日々の臨床において本講習内容を活かしていただければ幸甚です。
【報告者:神戸地区 井上和哉】