2023/12/28
《神戸地区講習会 第1弾》
開催日時:令和5年12月10日(日) 13:30~16:30
開催場所:あすてっぷKOBE セミナー室3 および オンライン(Zoom)
講師:寺子屋お産塾 代表 一橋アシラム院長 田中寿雄 先生
講題:~妊娠・妊娠ライフ・お産・子育て~妊娠ライフと鍼灸医療
令和5年12月10日(日) 13:30より寺子屋お産塾 代表、一橋アシラム院長 田中寿雄 先生をお招きして「~妊娠・妊娠ライフ・お産・子育て~妊娠ライフと鍼灸医療」との演題で田中先生の長期に渡る臨床経験の中でも妊娠、出産、母乳育児について田中先生の奥様や娘さんやお孫さんのエピソードを交えてお話をいただきました。特に母乳育児における「母乳の質改善」については長期に渡り取り組んでおられ、その「母乳の質」が改善されたことは「赤ちゃんが教えてくれる」と。赤ちゃんは顔色を伺ったり気を使ったりで母乳の飲み方を変えたりはしないため母乳の飲み方で「母乳の質」が改善されたことを証明してくれるとのこと。そして、故 入江正先生に師事され奇経を使用した治療の実技供覧を複数の方に施していただきました。「母乳の質改善」には奇経八脉の中でも任脉、督脉、陰蹻脉、陽蹻脉が特に関係するとのお話でした。長期に渡り、一つのテーマについて何度も何度も繰り返し取り組まれたことで現在のような完成形の治療スタイルに到達できたのだと思います。田中先生のような治療の取り組み方や思考はとても重要なことだと改めて感じることができました。
後半は田中先生のお弟子さんであるさいとうはり灸院の斉藤 裕美 先生にご登壇いただき、ご自身の臨床経験から鍼灸院、鍼灸師に欠けていることについてお話いただきました。斎藤先生はおっしゃいました「治療は回数が多い方がいい、長期間する方がいい」と。一般的に治療は短期間、少ない回数を求められることが多いですが、実際には治癒していくには時間がかかりますし、根本的な部分まで治療できていないと再発するケースが大半で、それでは治療とは言えないのではないかとのこと。そして、治療を継続するために鍼灸院や鍼灸師に欠けているものは「ゴール設定」ができていないことだと。つまり、患者さんも施術者も実感できる指標をしっかり設定し、その指標が改善したことを以て評価をするということでした。斎藤先生が専門とされているアトピー性皮膚炎の治療においては具体的には顎関節症の有無や腹部の血管拍動や脊柱の状態などを指標にされているそうです。あと、もう一つ重要なことは、睡眠状態が大切だとおっしゃっておられました。皆さんも臨床現場で患者さんの睡眠状態について問診をされているとは思いますが、少し深掘りして問診していただくといいかもしれません。
田中先生の長期間に渡る膨大な数稽古から得られた技術や心構え、斎藤先生の患者さんとの向き合い方や治療に対する考え方はいずれも非常に大切なことだと改めて実感することができたご講演でした。こういう症状にはこのような治療というような小手先の技術ではなく、本質的な部分に焦点を合わせることは本当に大切なことだと思いました。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2023/12/28
《Ring of Red 第10回記念 小野ハーフマラソン2023》
2023年12月3日(日)Ring of Red 第10回記念 小野ハーフマラソン2023では、ハーフ、5キロ、1.5キロのマラソンが行われました。
スタッフ8名で受療者92名(鍼12名・マッサージ80名)でした。
初めての参加でしたので、足手まといにならないようにだけ気をつけていました。
まずは、施術ベッドの設置等準備をし、賀内会長からスポーツマッサージの手ほどきを受け、天野副会長に練習させてもらい準備を整えました。
そうこうしていると、受付が始まり、施術する番がやってきました。
限られた時間、自分がどれだけ施術ができるのか、少し迷いながら行っていきましたが、ひとり、ふたりとやっていくうちに流れがみえてきて、楽しくなり、自らランナーの方に話しかけていました。
始まったころは太陽もでて暖かでしたが、終わりのころには、風も強く寒さをかんじるようになっていました。ランナーの方は、身体が少し冷えてきているようにも感じたので、身体を冷やさないようにとお声かけさせていただきました。
途中からはひっきりなしに来られ、待ち時間もありましたが、たくさんの方に来ていただいて、鍼、マッサージのよさを体感していただけたと思います。
わずかな時間、マッサージをさせていただいて、みなさんからは感謝のお言葉をいただきました。とてもうれしかったです。
そして、私自身、たくさんの方に施術できたことは、これからの施術にいかせそうです。
また、一緒に参加していた先生方ともお話ができて楽しく、とても有意義な時間でした。
ありがとうございました。
【報告者:神戸地区 船曳育子】
2023/12/07
《姫路地区講習会》
11月26日(日)午前10時より姫路市民会館4階第6会議室にて、宝塚医療大学特別教授の中村辰三先生にお越し頂き『電子灸(Nakamura灸)の開発とその効果』について学習しましたので報告します。
1970年代に中村先生が大阪、東京、アメリカと毎月長距離の出張があり激務の仕事をこなされていた時に、体調を崩し風邪を引きやすくなっていた。鍼灸師として体調管理に薬ばかり頼るのは恥ずかしいとの思いからお灸の効能を再確認し、深く研究するきっかけになった。その後、お灸の効能から83歳の今でも大きく体調を崩すことなく元気に働けている。
1・お灸で免疫力が上がる。
お灸により白血球が増える。通常、健康な人間でおおよそ4000~8000/1μl存在する。お灸をすることにより、その数が平均で約2割ほど増加する。特にその中でも好中球がまず増加する。これが身体を守る力すなわち免疫力として発現することを意味する。
ただし、今よく巷で用いられている『温灸』ではその効果は見られない。皮膚に直にするお灸『直接灸』でこそ効果が上げられる。
これはお灸の身体への侵襲性が必要なことを意味する。
2・お灸の普及を妨げる要因
・艾 (ガイシュ)を作るのに手間暇がかかる。
・直接灸の必要性を患者が充分に理解していない。
・病気を治すための治療法であることを理解していない。
・お灸による煙、匂いが服に付くなど。
・患者が熱くて灸痕が付くのを嫌がる。
などのデメリットがある。
3・電子灸たるN灸(Nakamura灸)
以上の直接灸のデメリットを克服するために電子灸たるN灸(Nakamura灸)を開発した。
特に、実際の火を必要としないこと、煙が出ないことは病院の中でも使用できるメリットがある。使用中は加熱部分の先端が光り、音が出ることで、通電加熱中かどうかの判別がし易くなっている。また火を使用しないことで視覚障碍の施術者でも安全にお灸をすることが出来る大きなメリットがある。
N灸にはプロ用の75℃(米粒大と同温)5秒連続刺激、一般用の67℃(半米粒大と同温)4秒連続刺激がある。プロ用の物でもサランラップ一枚を皮膚上にかますことで4℃接触温度が下がる。サランラップを折りたたみ重ねることで合計8℃下げることが可能になり、一般用と同じ67℃(半米粒大)として使うことも可能である。
・N灸の灸痕は直灸のように皮膚は黒くならず、濃いピンク色に近い灸痕になる。
・刺激量は各ツボに5壮(5回)程度。刺激毎は痒くなるのは直灸と同じ侵襲程度。
4・N灸(Nakamura灸)の実験(抜粋)
実験1
N灸(67℃使用)刺激前後の白血球の推移。
被験者:12名、2回刺激
内訳:手・足三里、合谷の左右6穴、6名
大椎、身柱、両風門、両肺愈の6穴、6名
結果:白血球、好中球の増加、リンパ球減少
ただし、施灸を継続的に続けるとリンパ球は増加に転じ、好中球などは平常値に戻る。
実験2
N灸(75℃使用)刺激前後の白血球の推移。
被験者:6名、週2回、2週間の計4回
内訳:手・足三里、合谷、三陰交の8穴
結果:白血球、好中球、リンパ球全てにおいて増加
75℃(米粒大の温度)を使用することで侵襲性が高く、効果を得られやすい。代田文誌が著した鍼灸真髄でも、一つのツボに米粒大7壮するのが通常であると記載されており、熱刺激の侵襲性を再現している。
また別の実験から67℃(半米粒大の温度)でも回数を増やすことによってリンパ球が増加することも分かっている。
実験3(概要のみ)
NK活性化について。
NK(ナチュラルキラー)細胞は癌細胞、ウィルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する大型のリンパ球である。
採決者の血清からリンパ球を分離して、これに51Cr-標的細胞(K-562細胞)を加えて培養し、NK細胞の細胞障害によって遊離する51Crを測定してNK活性とする。
このNK活性化に関しても有意値が見られた。
5・お灸と癌
通常は施灸3壮では痒くなりにくい。4~5壮据えると痒くなってくる。
癌患者は癌の数値が悪いといくら施灸しても痒くならない。数値が改善してくると施灸することで痒くなってくる。
体調不良を暫く我慢して病院を受診した方が、癌進行していると診断され1年保つかどうかという判断であった。癌と診断されてからその人は直ぐにお灸を始め、途中体調も回復した。腹水の関係で3年半目に病院に入院されることになり、お灸が中断すると体調が急激に崩れ亡くなった。入院中でもお灸が出来ていたらまた結果が違っていたのではないか。また、癌と診断された別の方では、切艾の小を更に半分にして患部上やその臓器の対応のツボに毎日施灸することで癌が無くなった事例もあった。
1年しか保たないと診断された方が、3年半生きられたという事実。早めに対処することで消失した事実にお灸の底力の強さを感じている。
直接灸をする施術院が少なくなっている現在、いまこそ治せる施術家として本当のお灸の力を認識してもらえたらとても嬉しい。
【報告者:姫路地区 佐藤暢彦】
2023/12/06
【第33回加古川ツーデーマーチ】
第33回加古川ツーデーマーチ スポーツ鍼灸マッサージボランティアに参加して
2023年11月11日から12日の2日にわたり、加古川市役所前広場をスタート・ゴール地点として、第33回加古川ツーデーマーチが開催されました。初日は早朝に木枯らし1号が吹き荒れる荒天となり、2日目も気温の低い中での開催となりました。
加古川ツーデーマーチとは、ウェルネス都市加古川を巡るウォーキングイベントであり、豊かな自然、まちのにぎわい、地域とのふれあいなどを通してウェルネスな暮らしの素晴らしさを感じていただく事を目的として開催されています(大会ホームページより引用)。
スタート、ゴール地点のある広場では、当会を含むウェルネスブースや地元特産物等を販売する屋台が所狭しと並び、メインステージでは主催者である加古川青年会議所の活気あふれる面々が司会を行い大会の雰囲気を盛り上げていました。
例年、兵庫県鍼灸マッサージ師会は、出場選手を対象としたスポーツマッサージを提供する協力団体として参加しています。今年度は、賀内会長をはじめ、天野副会長、木村事業部長、高野監事、清次氏、初参加の山口理事、水口氏の錚々たるメンバーの中に、鍼灸をメインに担当した私が3回目の参加を果たしました。
今回は、スポーツマッサージだけでなく鍼灸施術も提供することを試みました。今までの経験から、低温の中で開催されるイベントでは筋痙攣を起こす確率が高くなり、そのような時にはマッサージよりも鍼が有効ではないかと感じていたことから提言させていただいたところ早期に実現可能となりました。
この度は、80歳代の女性が筋痙攣を起こされましたが、木村事業部長のマッサージのみで軽快された為、筋痙攣に対する鍼の出番は残念ながらありませんでした。しかし、初体験であっても自ら鍼灸を希望される選手もいて、鍼をうった瞬間から身体の症状が変化していくことを体験され、「おもしろかった」と感想をいただく等、今後の活動に希望が持てる結果となりました。受療者数は、1日目 マッサージ40人、鍼灸8人、2日目 マッサージ59人、鍼灸4人となりました。2日目の鍼灸受療者が少ないことについては、1日目よりも受療希望者が多く受付に待機者が溜まってしまい、マッサージよりも時間を要する鍼灸を控えた事が考えられます。今後の課題は、より短時間で効果的なスポーツ鍼灸の実施と、鍼灸スペースの工夫です。人目を避ける、暖かくする等、肌の露出が多くなる事を考慮した空間作りが必要であると感じました。また、全日本鍼灸マッサージ師会のスポーツトレーナー講習では、スポーツ現場での灸は行わないことが原則となっていますが、この度の活動では山口理事が灸を実践され症例を残されました。
このように、当会のスポーツ事業では常に前進すべく新しい事に挑戦しています。少しでも興味がございましたらお声かけください。もっともっと多くの先生方と共に活動したいと思っています。
【報告者:神戸地区 小川結子】
2023/10/03
《夏期大学講座 第3日目》
1.(午前)街づくり健康体操
講師:兵庫県鍼灸マッサージ師会会長 賀内進一先生
今回の午前の講義では、「「小児鍼の概要と米山式小児鍼の実際2」健やかな子供の成長を考える」の題材で、森ノ宮医療大学 尾崎朋文先生の講義予定もコロナに感染された関係で、急遽賀内会長が講義される事となりました。
賀内先生は、小野市のスポーツ推進委員をやっており、2001年より介護推進に力を入れておられます。
内容は、賀内先生が脊柱管狭窄症を発症し、手術をされた後にストレッチ等を行い完治された事や、毎年、健康診断を受けていて、PSA(前立腺がん)が見つかり今年6月に手術を受けた等、例え健康に自信があっても健康診断は受ける事であると話された。
ストレッチは、フレイル予防(筋力低下の予防)にいいため是非勧めたいとの事。ストレッチは主に座った体制で行い、上下肢の主な筋肉(屈曲・.伸展・外転・内転・外旋・内旋等)のストレッチを行った。また、スクワットのやり方の紹介もあり膝をつま先より前に出ないようにゆっくり動かす事がいいとしている。体幹トレーニングでは、腹筋と背筋を鍛えられるやり方の紹介もされた。
ウォーキングも重要だが、しんどい場合は座った状態で腕を振りながらウォーキングする事やデスクワーク等で座りっぱなしの場合は短時間でも立って背伸びや首を回す等、一息入れるとリラックスできて効果的であると話された。
その他に頸や頭と表情筋のストレッチの紹介もあった。
なおストレッチ時は、5本指ソックスを推奨している。
以上が午前の内容でした。尾崎先生の講義が聞けなかったのは残念でしたがそれでも思ったより中身が濃い内容で、早速一部ですが施術に取り入れています。
主に膝をやっていますが患者さんが楽になったと喜ばれて帰られています。患者さんの喜ぶ顔を見て本当に本講義を聞いてよかったと思いました。
2.(午後)「腰下肢症状に対する鍼灸治療」
講師:宝塚医療大学 保険医療学部鍼灸学科 井上 基浩先生
内容は、腰下肢症状の原因にあげられるのが、主に椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症等があげられる。
そうなると軸索突起が傷ついているので鍼治療が効果的である。
また10代から変性が始まるとの事。しかし、交通事故等で繊維軟骨が傷ついてしまう事もある。その際の鍼治療を行うにあたり太陽膀胱経の第一行線~第三行線を施術すると良いとの事。また、腰下肢症状では、仙腸関節は恥骨結合があり、そんなには潰れないが「L4・L5・S1」が多いとしている。(ゲンスレンテスト・ニュートンテスト陽性)因みに大腰筋は、L1~L4の腸腰筋の一部である。また関節と筋は分けるも重要である。
※鍼灸治療の適応とはならない症状
1,腰下肢症状が徐々に悪化
2,激しい疼痛で体が動かない
他5項目あり以上の症状では、鍼治療では治らないため病院に行く事を勧めている。
問診では、棘突起を触診して状況を確認し施術する。
治療には、鍼治療と注射治療があり共に刺激療法であるが麻酔があるかないかの違いである。筋弛緩の中で、胸郭出口症候群の一部である小胸筋症候群がある。また椎間関節部刺激を無菌状態で行うとしている。
下肢症状として痛み箇所の末梢神経(主に浅腓骨神経・総腓骨神経等)・陰部神経(仙骨裂孔)に10Hz~20Hzの鍼通電で施術する
※脊髄分節性痛覚と広汎性侵害抑制調節の治療の施術方法
坐骨神経の治療として坐骨神経管と言うたくさんの軸索が包まれた箇所を治すのだが軸索が損傷していると治らないため病院へ行く事を勧めている。因みに末梢神経にはシュワン細胞が流れている。(中枢神経はグリア細胞が流れている)。
最後に臨床実技として腰部・臀部を中心に施術してその中で骨と腱の関係の話もされた。
僕も腰部から下肢に向けてマッサージをしておりますがやはりマッサージはリンパや軸索突起を壊しやすいためその時はいいのですが、後で痛くなりやすく鍼治療だと痛みが低減しにくいので改めて鍼治療の奥深さを感じました。
今回は午前の講義が変更と言うアクシデントがありましたが仕事にも役立つ情報が盛りだくさんだったので充実した一日となりました。本当にありがとうございました。
【報告者:神戸地区 村田恵也】
2023/09/03
《夏期大学講座 第2日目》
【夏期大学を受講して】
2日目となる今回は「認知症と東洋医学」(はりきゅう和み座・谷本篤志先生)と「養生学その2:養生の5つの基本を学ぶ」(明治国際医療大学・伊藤和憲先生)でした。
2年後、65歳以上で20%近くの有病率が予測される認知症。新型コロナウイルス感染がアルツハイマー型(認知症の約7割)罹患を高めるとの研究報告もあるそうです。また脳の血流低下と深く関係している事が知られる中で東洋医学への期待も高く、数多の叡知と最新情報を紹介。認知症の徴候として知られる「軽度認知障害」(MCI)は日常生活に支障を来さないものですが、5年以内に半数近くが認知症に進むというデータもあります。かつての”痴呆”が認知症に変更されて来年で20年、日頃より関心を持つべくアンテナを張り巡らさねばと思いました。
養生学は私が伊藤先生をお願いした経緯もあって楽しみでした。養生=「命を正しく養う」。一方、治療場面で説明として使う”セルフケア”は特定の病気に対するケアやコントロール法で「予防」に近いもの。養生は季節や文化・伝統習慣とも関連する幅広いイメージです。その中で先生が強調されていた「身体の価値観を変える」は説得力のある内容でした。こういった考えをベースに考案されたタイプ分類によって不調の原因を把握、対処するというものです。分類に際して専用アプリが用意されているとは古くて新しい養生の姿。講義では「緩める」「温める」「整える」「補う」「鍛える」をキーワードに東洋医学・西洋医学両方の側面より解説。先生は養生普及を目的とした拠点を学内に設置、広く発信されています。この事は鍼灸マッサージ業界の後押しに繋がるものとしても心強く感じました。
【報告者:西宮地区 横山善人】
2023/08/13
《夏期大学講座 第1日目》
令和5年7月23日(日)令和5年度夏期大学講座が開講した。今年のメインテーマは「ニーズに合った鍼灸マッサージ師を目指して」。開講式後、午前は明治国際医療大学 鍼灸学部教授 廣正基先生による「高血圧症に対する鍼灸治療」、午後からは理学療法士 松本元成先生による「肘・手関節の筋肉とスポーツ障害の関連について」と題した講演を行った。
午前の講演1では高血圧の病態をまず教わった。血圧とは血管内の血液が血管壁にかかる圧力で、心拍出量×末梢血管抵抗で求められる。血圧は絶えず変動し、計測したときの数値が高値であったとしても、高血圧症であるとは限らない。毎日同じ時間に条件を合わせて計測することが必要である。また、白衣高血圧や早朝高血圧、夜間高血圧、ストレス高血圧などもあるので気を留めておきたい。高血圧であっても、自覚症状があることが少なく、突然、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすサイレントキラーとも呼ばれている。高血圧を引き起こす原因がはっきりとしている二次性高血圧症は全体の10%程度である。これは糸球体腎炎、腎盂腎炎や原発性アルドステロン症など疾患が影響している。医療機関での治療が必要であるため、高血圧で来院されたときにはこのような疾患の有無も確認がいる。
鍼灸マッサージの施術で原因が不明の本態性高血圧に降圧の効果を発揮する。廣先生は現在、きららの湯若狭鍼灸院に勤務されている。ここで温泉入浴前後の血圧の変動を調査された。温泉でもかなりの割合で収縮期血圧の下降がみられた、ただし、脈拍は増加した。また、末梢(特に下腿)への鍼刺激の前後での血圧の違いも調査した。結果は血圧、脈拍ともに下降した。つまり、鍼刺激で血圧が下がる効果と副交感神経を優位にし、脈拍を抑える効果も得られるのである。我が国の高血圧症罹患者は4,300万人いるという。隠れ高血圧症も含めば、かなりの人数になる。治療費を抑えるためにも、予防医療である鍼灸マッサージが高血圧症にも効果があることを認識し、患者の健康増進に役立たせたい。
午後からの講演2では肘・手関節に関係する解剖や運動を整理し、肘の内側、外側の痛みについて学んだ。肘の内側の痛み(上腕骨内側上顆炎、野球肘)では屈筋群のオーバーユース、外反ストレスによる靭帯損傷、尺骨神経由来の痛みが多い。外側の痛み(上腕骨外側上顆炎、テニス肘)では手関節を背屈させる動き、回内作業や握る作業などによる筋肉、特に短橈側手根伸筋のオーバーユースが原因であることが多い。パソコン作業もそれに含まれるため、デスクワーク業務者に上腕骨外側上顆炎の発症率が高い。
実技として徒手検査を項目ごとに教わった。内側痛では内側靭帯へのストレステスト、前腕屈筋へのストレステスト、尺骨神経へのストレステストを行い、肘の痛みの原因を見つけ、野球をしている子どもであれば、離断性骨軟骨炎(OCD)も疑いに入れ、投球を規制する指導もしていく必要がある。また、患部外、股関節や肩甲骨、胸郭の動きを確認し筋緊張を緩めることで、肘への負担が軽減する。外側の場合も同様に痛みの評価のための徒手検査を行い、ストレッチ、テーピングも教わった。
参加者は積極的に質問され、講師も丁寧に対応してくださった。180分中2回休憩をとったが、講師は休憩中も質問を受けておられたので、お疲れのことであっただろう。デスクワークされている方の割合が多いことには驚いたが、今の時代パソコン作業は必須であるため、多くの方が発症する可能性がある。しっかりと身に着け、鍼灸マッサージで効果を実感していただくことが必要である。また、デスクワークされている方への発症予防にもつなげていける講演内容であったと思う。
【報告者:加古川地区 山口尚代】