2024/07/01
《令和6年度 神戸地区講習会》
令和6年6月16日(日) 13時30分より德岡里実 先生をお迎えして「【さとう式リンパケア】入門~「触れる」ことの深さを知る~」との演題で講義と実技指導を行っていただきました。德岡先生の雰囲気と柔らかい話し方や声のトーンから終始和やかな講習会となりました。
【さとう式リンパケア】は歯科医師である佐藤先生が顎関節症の治療の一環として行っていた咬筋スパズムに対するマッサージが起源だそうですが、接触する指の圧力を少なくした方が治療効果が高いことを発見されたそうです。触れる圧力を少なくすることで、末梢の微小循環血液量が改善され、脈管外の間質液の循環が改善されることで、筋ポンプ機能などが改善され、筋緊張が解消されていきます。間質液は神経伝達などにも関与しており、神経系の調整にもなります。
また、適度な触覚刺激はオキシトシンやセロトニンといった脳から分泌される物質の分泌を促すことも知られており、これらは「幸せホルモン」とも言われ、肉体的な不調を整えるだけでなく、人そのものを豊かにしてくれるメソッドということになります。
また、【さとう式リンパケア】では口腔、胸腔、腹腔の三つの腔を重視しており、腔を立てるよう調整をしていくそうです。上述の筋緊張を取ることは姿勢を整えることになり、正しい姿勢を取ることで三つの腔が正常な形となり不良姿勢の解消はもとより身体が緩むことで血流やリンパ還流や神経伝達などがスムーズになり本来の状態になっていくということでした。
実技のデモンストレーションにおいてはモデル患者の状態把握から施術を施した後とのビフォーアフターで状態変化がモデル患者にも体感できたようでした。また、少数グループでの実技練習においては先生にグループを巡回していただいて、多くの受講者が先生の施術を体験し、その触覚刺激量の少なさに驚嘆していました。
【さとう式リンパケア】については佐藤先生のyoutubeチャンネルにも多くの動画が掲載されていますが、この刺激量の感覚は動画ではなかなか理解できないと思いますし、また、大人数でデモンストレーションを見るだけでなく、実際に体感することの重要性を再認識した講習会となりました。今回、受講された方には是非、日々の臨床において本講習内容を活かしていただければ幸甚です。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2024/05/02
《神戸地区講習会 第2弾》
開催日時:令和6年3月3日(日) 13:30~16:30
会場:神戸市中央区文化センター11階 会議室1001号室
講師:学校法人 呉竹学園 臨床教育センターManager 船水隆広 先生
講題:「メンタルヘルスや美容に安全で効果的な鍉鍼テクニック【TST】の理論と実技」
去る令和6年3月3日13時30分より神戸市中央区文化センターにて学校法人 呉竹学園臨床教育センターマネージャー 船水隆広 先生をお招きして「メンタルヘルスや美容に安全で効果的な鍉鍼テクニック【TST】の理論と実技」との講題で講義と実技供覧を行っていただきました。
講義の冒頭に船水先生が関わっておられる様々な活動のご紹介があり、教育現場だけでなく、海外も含めてご活躍されていることに感心させられました。その中で、鍉鍼を使用されるようになった経緯のお話がありました。船水先生はうつ病やパニック障害などメンタルヘルスにご興味がありそういった患者も多く施術されていたそうです。メンタルを患っている方は皮膚が過敏になっている方も多く、刺入するタイプの鍼は手技としてはソフト刺激であったとしても受け入れてもらえないことが多く、であればと鍉鍼を使用されるようになったということでした。さらに、現在流通している鍉鍼は先端が細く、皮膚への刺激が強いこともあり、オリジナルの鍉鍼を作成するに至ったと。また、鍉鍼のみで施術が完結するような施術を行っているような文献もなかったことからオリジナルの手技を構築するに至ったとのことでした。
メンタルを患っている方の治療の一環として顔の血色をよくしたり、表情を作るために口角を上げやすくする目的などで顔面へのアプローチを行うことで患者の状態が一段階改善することにもなり、同時に美容的なアプローチの理論構築にも繋がっていったとのことでした。
船水先生は人体解剖も数多くされており、顔面についてはたくさんの筋肉がついているが、筋層はとても薄く、血流が悪くなると状態がすぐに悪くなるため、気血の流れを改善し、顔面の血流を改善し、筋や皮膚の状態を改善していくとのことでした。
船水先生が考案された鍉鍼についてもご紹介いただきました。主に使用される鍉鍼はソフトな形に加工された鍼先と反対側には球状になっており、鍼体には溝が切ってあります。気を流して治療していくと説明をすると気がわからないという施術者が必ずいて、そういった方でも気を流すことができるようにするために溝が切ってあるそうです。船水先生は「気は固有振動数」という考えをお持ちで、鍼体の溝を指を滑らすことで振動が発生し、気が分からなくても気を流せるということだそうです。気は生命体の持つ波動の一種だと私は考えているのですが、固有振動数という考えは共感や新鮮さを感じました。
後半の実技供覧ではモデル患者に対し、船水先生がされている基本的な手順と、それぞれの部位に、どのような手技を施していくのかということを詳しく説明していただきました。患者の状態によって施術部位や刺激量など変化はすると思いますが、基本的には胸腹部、四肢、背腰部、頭頸部、顔面とまさに全身治療でした。
非常に内容の濃いご講演で消化不良になっている方も少なくないと思いますが、鍉鍼ならではの手技や鍉鍼だからこそ行いやすい部位など日々の臨床にプラスしていただければ幸いです。
今回も会場とオンラインのハイブリッド方式での講習会開催といたしました。会場準備、撮影等、ご協力いただいた先生方に感謝申し上げます。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2024/04/02
《神戸ブロック臨床研修会》
令和6年2月23日(金)神戸市立総合福祉センターにおいて、高齢化社会における伝承医学の役割「不老長生と道教思想」をテーマに、ベーネ御影治療院院長 呉光崑(ごう みつる)先生にご講演いただいた。
今回のテーマ「不老長生と道教思想」は鍼灸を学ぶ以前から関心があったので楽しみにして参加しました。そして期待にたがわず有益な研修会になりました。 講師の呉光崑先生は御本人が言うように「胃の氣」が充実したエネルギッシュな方で、迫力のある波動が伝わりグイグイと惹きつけられ3時間の研修会もあっという間でした。
前半は講義で「不老」と「長生」のそれぞれの意味を中国伝承医学の観点からわかりやすく解説され、後半は人迎気口脈や九道の脈を切り口に経筋治療の説明、さらには呉先生が普段行われている鍼治療の一部を見せていただきました。
講義も実技もそれぞれ素晴らしく学ぶところも多かったのですが、最も印象に残りかつ呉先生の訴えたかったことと推察されるのは、資料にあった「傷寒論」の序文の精神だと思いました。「医術の研究に心をそそがず、自らの身を養生しない」、当時から現代に至るまで軽佻浮薄な風潮に対して「医」に関わる者として肝に銘じておきたいことだと思います。そのために「古典」に立ち返り学ぶことの大切さも感じています。
今回も内容の濃いとても充実した研修会でした。講師の呉先生、そして毎回充実した研修会を企画運営して下さるスタッフの皆様、ありがとうございました。
【報告者:一般 脇岡望文】
2024/03/02
《世界遺産姫路城マラソン2024》
姫路城マラソン2024 マッサージボランティアに参加して
令和6年2月11日に世界遺産姫路城マラソン2024が開催されました。今回から鍼灸マッサージ師会によるマッサージボランティアが再開されたので初めて参加させていただくことになりました。コロナ禍のため久しぶりの機会となったようです。
集合場所から現地に移動して、まずは会場のセッティングから。皆さん手慣れた様子で作業されていました。まだランナーが帰ってくるまで時間があるので、私を含めて初参加のメンバーはマッサージ手順のおさらいをしてもらい準備を整えます。
マッサージ会場が地下駐車場のため外の様子は分かりませんが、昼近くに走り終えたランナーが戻ってくるようになりいよいよマッサージ開始。時間と手順を意識して確実に施術していきます。ランナーは各地から来られていて色々なお話を伺う事も出来ました。最初はまばらでしたが、時間が経つにつれて待合スペースがいっぱいになる位に多くの方に来て頂きました。慣れてくると他の方の施術の様子も見られるようになり、各先生方は基本の手順を踏襲しつつも体の状態に応じてアレンジされており勉強にもなりました。また、今回から鍼も受けられるベッドを設定していたのですが、大変人気となっており鍼需要の高まりを実感しました。
過去の例として足がつる等の事例は聞いていましたが、気温や天候に恵まれたためか特に問題はなく終了。撤収作業を終え6時間ぶりに地上に戻った時には心地よい充実感がありました。また今後も機会があれば参加したいと思います。
【報告者:姫路地区 田中尚人】
2023/12/28
《神戸地区講習会 第1弾》
開催日時:令和5年12月10日(日) 13:30~16:30
開催場所:あすてっぷKOBE セミナー室3 および オンライン(Zoom)
講師:寺子屋お産塾 代表 一橋アシラム院長 田中寿雄 先生
講題:~妊娠・妊娠ライフ・お産・子育て~妊娠ライフと鍼灸医療
令和5年12月10日(日) 13:30より寺子屋お産塾 代表、一橋アシラム院長 田中寿雄 先生をお招きして「~妊娠・妊娠ライフ・お産・子育て~妊娠ライフと鍼灸医療」との演題で田中先生の長期に渡る臨床経験の中でも妊娠、出産、母乳育児について田中先生の奥様や娘さんやお孫さんのエピソードを交えてお話をいただきました。特に母乳育児における「母乳の質改善」については長期に渡り取り組んでおられ、その「母乳の質」が改善されたことは「赤ちゃんが教えてくれる」と。赤ちゃんは顔色を伺ったり気を使ったりで母乳の飲み方を変えたりはしないため母乳の飲み方で「母乳の質」が改善されたことを証明してくれるとのこと。そして、故 入江正先生に師事され奇経を使用した治療の実技供覧を複数の方に施していただきました。「母乳の質改善」には奇経八脉の中でも任脉、督脉、陰蹻脉、陽蹻脉が特に関係するとのお話でした。長期に渡り、一つのテーマについて何度も何度も繰り返し取り組まれたことで現在のような完成形の治療スタイルに到達できたのだと思います。田中先生のような治療の取り組み方や思考はとても重要なことだと改めて感じることができました。
後半は田中先生のお弟子さんであるさいとうはり灸院の斉藤 裕美 先生にご登壇いただき、ご自身の臨床経験から鍼灸院、鍼灸師に欠けていることについてお話いただきました。斎藤先生はおっしゃいました「治療は回数が多い方がいい、長期間する方がいい」と。一般的に治療は短期間、少ない回数を求められることが多いですが、実際には治癒していくには時間がかかりますし、根本的な部分まで治療できていないと再発するケースが大半で、それでは治療とは言えないのではないかとのこと。そして、治療を継続するために鍼灸院や鍼灸師に欠けているものは「ゴール設定」ができていないことだと。つまり、患者さんも施術者も実感できる指標をしっかり設定し、その指標が改善したことを以て評価をするということでした。斎藤先生が専門とされているアトピー性皮膚炎の治療においては具体的には顎関節症の有無や腹部の血管拍動や脊柱の状態などを指標にされているそうです。あと、もう一つ重要なことは、睡眠状態が大切だとおっしゃっておられました。皆さんも臨床現場で患者さんの睡眠状態について問診をされているとは思いますが、少し深掘りして問診していただくといいかもしれません。
田中先生の長期間に渡る膨大な数稽古から得られた技術や心構え、斎藤先生の患者さんとの向き合い方や治療に対する考え方はいずれも非常に大切なことだと改めて実感することができたご講演でした。こういう症状にはこのような治療というような小手先の技術ではなく、本質的な部分に焦点を合わせることは本当に大切なことだと思いました。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2023/12/28
《Ring of Red 第10回記念 小野ハーフマラソン2023》
2023年12月3日(日)Ring of Red 第10回記念 小野ハーフマラソン2023では、ハーフ、5キロ、1.5キロのマラソンが行われました。
スタッフ8名で受療者92名(鍼12名・マッサージ80名)でした。
初めての参加でしたので、足手まといにならないようにだけ気をつけていました。
まずは、施術ベッドの設置等準備をし、賀内会長からスポーツマッサージの手ほどきを受け、天野副会長に練習させてもらい準備を整えました。
そうこうしていると、受付が始まり、施術する番がやってきました。
限られた時間、自分がどれだけ施術ができるのか、少し迷いながら行っていきましたが、ひとり、ふたりとやっていくうちに流れがみえてきて、楽しくなり、自らランナーの方に話しかけていました。
始まったころは太陽もでて暖かでしたが、終わりのころには、風も強く寒さをかんじるようになっていました。ランナーの方は、身体が少し冷えてきているようにも感じたので、身体を冷やさないようにとお声かけさせていただきました。
途中からはひっきりなしに来られ、待ち時間もありましたが、たくさんの方に来ていただいて、鍼、マッサージのよさを体感していただけたと思います。
わずかな時間、マッサージをさせていただいて、みなさんからは感謝のお言葉をいただきました。とてもうれしかったです。
そして、私自身、たくさんの方に施術できたことは、これからの施術にいかせそうです。
また、一緒に参加していた先生方ともお話ができて楽しく、とても有意義な時間でした。
ありがとうございました。
【報告者:神戸地区 船曳育子】
2023/12/07
《姫路地区講習会》
11月26日(日)午前10時より姫路市民会館4階第6会議室にて、宝塚医療大学特別教授の中村辰三先生にお越し頂き『電子灸(Nakamura灸)の開発とその効果』について学習しましたので報告します。
1970年代に中村先生が大阪、東京、アメリカと毎月長距離の出張があり激務の仕事をこなされていた時に、体調を崩し風邪を引きやすくなっていた。鍼灸師として体調管理に薬ばかり頼るのは恥ずかしいとの思いからお灸の効能を再確認し、深く研究するきっかけになった。その後、お灸の効能から83歳の今でも大きく体調を崩すことなく元気に働けている。
1・お灸で免疫力が上がる。
お灸により白血球が増える。通常、健康な人間でおおよそ4000~8000/1μl存在する。お灸をすることにより、その数が平均で約2割ほど増加する。特にその中でも好中球がまず増加する。これが身体を守る力すなわち免疫力として発現することを意味する。
ただし、今よく巷で用いられている『温灸』ではその効果は見られない。皮膚に直にするお灸『直接灸』でこそ効果が上げられる。
これはお灸の身体への侵襲性が必要なことを意味する。
2・お灸の普及を妨げる要因
・艾 (ガイシュ)を作るのに手間暇がかかる。
・直接灸の必要性を患者が充分に理解していない。
・病気を治すための治療法であることを理解していない。
・お灸による煙、匂いが服に付くなど。
・患者が熱くて灸痕が付くのを嫌がる。
などのデメリットがある。
3・電子灸たるN灸(Nakamura灸)
以上の直接灸のデメリットを克服するために電子灸たるN灸(Nakamura灸)を開発した。
特に、実際の火を必要としないこと、煙が出ないことは病院の中でも使用できるメリットがある。使用中は加熱部分の先端が光り、音が出ることで、通電加熱中かどうかの判別がし易くなっている。また火を使用しないことで視覚障碍の施術者でも安全にお灸をすることが出来る大きなメリットがある。
N灸にはプロ用の75℃(米粒大と同温)5秒連続刺激、一般用の67℃(半米粒大と同温)4秒連続刺激がある。プロ用の物でもサランラップ一枚を皮膚上にかますことで4℃接触温度が下がる。サランラップを折りたたみ重ねることで合計8℃下げることが可能になり、一般用と同じ67℃(半米粒大)として使うことも可能である。
・N灸の灸痕は直灸のように皮膚は黒くならず、濃いピンク色に近い灸痕になる。
・刺激量は各ツボに5壮(5回)程度。刺激毎は痒くなるのは直灸と同じ侵襲程度。
4・N灸(Nakamura灸)の実験(抜粋)
実験1
N灸(67℃使用)刺激前後の白血球の推移。
被験者:12名、2回刺激
内訳:手・足三里、合谷の左右6穴、6名
大椎、身柱、両風門、両肺愈の6穴、6名
結果:白血球、好中球の増加、リンパ球減少
ただし、施灸を継続的に続けるとリンパ球は増加に転じ、好中球などは平常値に戻る。
実験2
N灸(75℃使用)刺激前後の白血球の推移。
被験者:6名、週2回、2週間の計4回
内訳:手・足三里、合谷、三陰交の8穴
結果:白血球、好中球、リンパ球全てにおいて増加
75℃(米粒大の温度)を使用することで侵襲性が高く、効果を得られやすい。代田文誌が著した鍼灸真髄でも、一つのツボに米粒大7壮するのが通常であると記載されており、熱刺激の侵襲性を再現している。
また別の実験から67℃(半米粒大の温度)でも回数を増やすことによってリンパ球が増加することも分かっている。
実験3(概要のみ)
NK活性化について。
NK(ナチュラルキラー)細胞は癌細胞、ウィルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する大型のリンパ球である。
採決者の血清からリンパ球を分離して、これに51Cr-標的細胞(K-562細胞)を加えて培養し、NK細胞の細胞障害によって遊離する51Crを測定してNK活性とする。
このNK活性化に関しても有意値が見られた。
5・お灸と癌
通常は施灸3壮では痒くなりにくい。4~5壮据えると痒くなってくる。
癌患者は癌の数値が悪いといくら施灸しても痒くならない。数値が改善してくると施灸することで痒くなってくる。
体調不良を暫く我慢して病院を受診した方が、癌進行していると診断され1年保つかどうかという判断であった。癌と診断されてからその人は直ぐにお灸を始め、途中体調も回復した。腹水の関係で3年半目に病院に入院されることになり、お灸が中断すると体調が急激に崩れ亡くなった。入院中でもお灸が出来ていたらまた結果が違っていたのではないか。また、癌と診断された別の方では、切艾の小を更に半分にして患部上やその臓器の対応のツボに毎日施灸することで癌が無くなった事例もあった。
1年しか保たないと診断された方が、3年半生きられたという事実。早めに対処することで消失した事実にお灸の底力の強さを感じている。
直接灸をする施術院が少なくなっている現在、いまこそ治せる施術家として本当のお灸の力を認識してもらえたらとても嬉しい。
【報告者:姫路地区 佐藤暢彦】