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お知らせ

2018/08/31

《夏期大学講座学術講演会》

猛暑の中、メインテーマ「現代医学における鍼灸マッサージ師の役割」を掲げ、著明な6人の講師を迎えて3日間にわたって開催された。

第1日目7月22日(日)神戸市勤労会館にて、午前は山下智也先生に「腸内フローラについての最新医療」について、午後は大上勝行先生に「経絡治療による脈状診」について、ご講演をいただいた。

~第1日目の感想:学生Y~

私は県立視覚特別支援学校の理療科三年生です。夏期大学講座には昨年から参加させていただいております。熟練された先生方や経験豊富な諸先輩方の中に入り勉強できる機会は、学生である私にとって大変刺激となり、向上心を培う上でとても重要なものとなっています。また今回、敷居は高いのですが、個人的に大変興味のある「経絡治療における脈状診」という講義でしたのでとても楽しみにしておりました。

午前の講演について:最近テレビやラジオで耳にする機会が多い腸内フローラについて、消化器疾患はもちろんのこと様々な疾患との関係が研究されていることを知りました。腸内フローラについての医療技術が更なる進歩を遂げる事を期待しつつ注目していきたいと思います。余談ですが、質問時間に話されていた眠れない時の対処法としてホットミルクを飲むと寝入りがいいというのは、時々実践させてもらっています。

午後の講演について:東洋医学の基本となる陰陽の話から始まり、望聞問切で診断する四診法、陰陽・表裏・寒熱・虚実で病を分類する八綱弁証、浮沈・遅数・虚実で診る祖脈診など東洋医学初心者の私でも、とても分かりやすく面白い内容の講義でした。点でしかなかった知識が太い一本の線となるのを感じることができました。経絡治療や脈診は一朝一夕には習得できないものですので、日々経験を積み今日得た知識を支えに臨床の授業に活かしていきたいと強く思いました。

 

     山下智也先生             大上勝行先生

 

第2日目8月3日(金)明石商工会議所にて、午前は谷川仁士先生に「これまでの治療院経営について」について、午後は宮本俊和先生に「スポーツ鍼灸の現状と課題-東京1964vs2020-」について、ご講演をいただいた。

~第2日目の感想:賛助会員 宮田敏広~

理療科教員をしている私にとって、毎年の夏期大学講座は大いに楽しみであり、都合が許す限り参加しております。そして毎回多くの知識を得る機会をいただき、有り難く思っております。

午前の講演について:谷川先生は徳島県の盲学校を卒業後、地元の病院に11年勤務され独立、治療院を開業されました。その後、会社を立ち上げられ経営者としてご活躍されています。治療院を開業したことがない私にとっては非常に興味があり楽しみにしていました。なぜなら、生徒の中には年齢が高く、すぐにでも開業したい者もいて、その生徒からの質問に対して的確なアドバイスができず困った経験が過去に何回もあったからです。OBの方々もいらっしゃるのですが、具体的なところは少々聞きづらいので、今回はよい機会と思っていました。お話では、会社にすると法人としての信用ができ、法人契約をしたいホテル等との提携がスムーズになるし、社会保険に加入等の被雇用者のメリットも大きいということでした。また、この業界の見通しについてもよく考えておられ、売り上げの割合を変化させないと今後の収入の安定は見込めない、そして、医療保険の療養費の取り扱いは今後ますます厳しくなるので、介護保険を導入して訪問介護事業を拡大していくとのことでした。日々、経営者として先を考えて行動し努力し続けている姿を見習わないといけないと思いました。

午後の講演について:前半はスポーツ鍼灸の現状と課題についてのお話でした。まずは「東京オリンピック・パラリンピック2020年大会」の背景について。最近、「パラリンピック」という言葉をよく聞きますが、2011年8月に施行された「スポーツ基本法」によるところが大きいとのことでした。そして、超高齢化社会の我が国ですが、元気で活動的な高齢者も増加しており、その多くの人たちが膝痛を抱えていますが、サプリメントに頼ったりして鍼灸マッサージを受診していないのが実情とのことでした。このように市場は拡大しつつあるので、いかに鍼灸マッサージを受療してもらえるかを考えていく必要があると思います。後半は肩関節のスポーツ外傷・障害に対する鍼灸マッサージについて。スポーツ選手が来院したらどうするか?①外傷か障害かを見分ける②要因分析③日常生活についてのアドバイス等が必要であることが理解できました。そして、肩関節のスポーツ障害の治療法は実技をまじえて説明していただきました。また、五十肩の治療法も同様とのことでした。大変わかりやすく、参考になりましたので今度、授業で使用したいと思います。

最後になりましたが、今回のご講演で得た知識・技術を今後の臨床や授業に活かし、理療の発展に少しでもお役に立てればと考えています。有り難うございました。

 

     谷川仁士先生             宮本俊和先生

 

第3日目8月26日(日)明石商工会議所にて、午前は田中祐貴先生に「スポーツ内科を活かしたパフォーマンス向上」について、午後は朝日山一男先生に「災害支援にどう取り組むか」について、ご講演をいただいた。

~第3日目の感想:西神戸地区会員 井上和哉~

午前の講演について:スポーツ内科というとあまり聞きなれない分野ですが、トップアスリートになればなるほどサポート体制が充実してきており、その一分野という位置付けとなります。スポーツ医学というと、以前では主に整形外科領域を中心にサポートされてきましたが、現在では内科、栄養学、婦人科、薬学(アンチドーピング)、メンタル、眼科、歯科など多くの専門家が包括的にサポートをするようになっています。もちろんその中には我々鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師も入ってきます。

スポーツをされている方にはトップアスリートから学校での部活動や健康増進などを目的とした一般市民まで様々な方がいらっしゃいますが、皆さんが必ずしも万全の状態で高いパフォーマンスが上げられている訳ではないというのが実情です。その中でもスポーツ内科で代表的なスポーツ貧血について詳しくお話いただきました。

スポーツ内科では「トレーニング」「食事(栄養)」「休養(睡眠)」「メンタル」の4要素が大切とされていて、それぞれのバランスが重要でバランスの崩れが不調に繋がると考えるそうです。競技をされている方はパフォーマンスの低下があると上記のトレーニングが足りないと更に激しいトレーニングをしてしまう傾向が強いそうですが、実は栄養や休養が不足してたり、競技による身体への負荷のかかり方(シューズが合っていないなど)のケースも少なくないようです。そして、その中にスポーツ貧血を呈している場合があるとのことでした。トップアスリートやクラブ活動の場合は、特に試合の日程も関係しますから迅速に対処し改善していく必要があります。そのような場合は投薬や適切な食事指導などが必要ですから、我々、鍼灸マッサージ師が施術に携わっていたとしても速やかに専門家と連携して対応することが重要です。

また、トップアスリートであれば包括的な支援体制が整っているかもしれませんが、市民レベルではなかなかそのような環境にはないと思います。そこで一役立てるのが我々鍼灸マッサージ師です。様々な不調を訴えて来院される患者さんの中にはスポーツを行なっている方も多くいらっしゃいます。その患者さんの不調はスポーツに起因するものかもしれませんから、外科的にも内科的にもスポーツ医学の知識を持っておくことで、鍼灸マッサージで対応できる部分はしっかり対応して、スポーツ内科などでの治療が必要であればそちらにバトンを繋げるといった事ができるようにしておきたいものです。

 午後の講演について:講演の前半は阪神淡路大震災以降、各地で発生している大災害に対して業団体の災害支援体制がどのように構築されてきたか、また現状がどのような体制になっているのか、というお話と今後のビジョンについてお話をいただきました。後半は南海トラフ大震災が発生したとの想定で、設定した地域から被災地支援へ向かうためのシュミレーションをグループワーク形式で行いました。

 災害が発生した際の災害支援、ボランティア活動には様々な形があると思いますが、阪神淡路大震災が発生した頃は災害支援体制が構築されておらず大混乱したことは記憶されている方もいらっしゃると思いますし、2年前の熊本地震の際にも支援体制の構築が不十分だった部分があったことは記憶に新しいと思います。

 災害医療体制については国際医療技術財団(JIMTEF)においてDMATを中心とする、多職種連携の講習が行なわれ、鍼灸マッサージ業団体も講習に参加することで医師、看護師等と連携して活動ができるようになってきたとのことでした。また、鍼灸マッサージ業界においては業団体が複数存在しており、日本鍼灸師会、全日本鍼灸マッサージ師会など大きな業団体が連携して活動できるように体制が整ってきたとのことでした。

 災害で被災された方は精神的にも肉体的にも経済的にも大きなダメージを受け、本当にお気の毒に思いますし、多くの支援を必要とします。支援は必要に応じて行なわれるのが原則だと思いますし、そういう意味も踏まえて、指揮命令系統がきちんと確立された体制が整えられてきていることはよいことだと思います。

 また、最近では災害はどこで発生しても何ら不思議ではありませんから、いつ誰が被災するかも分かりません。支援体制が整っているということは、どこで災害が発生しても拠点になる所さえあれば対応ができるということも大きな意義だと思います。わが国は災害立国と言ってもいいほど非常に災害が多く、また全国どこにいても災害に遭遇する可能性があります。いつ自身が支援を必要とする立場になるかは分かりません。そのようなことを踏まえると互いに支援できる環境を整えておくことは重要なことだと思います。

 本会は私も含めて視力障害をお持ちの方が多いですから、被災地に出向いて支援活動を行なうのは難しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、支援の形はいろいろとありますから、それぞれが出来る支援活動を行なっていきたいものです。

 第3日目の講演は「スポーツ」と「災害対策」についてでしたが、それに「介護」を含めて、それぞれに包括ケアシステムが確立されてきています。以前では特に開業されている方は自身の院のみで運営等を考えてきたと思いますが、今後は包括ケアシステムの一端を担うという運営形態も考慮に入れていく必要があるのではないかと思います。関係他業種と連携しコミュニケーションを取っていくことは容易なことではありませんし、一定レベル以上の知識も必要となってくると思いますので、常日頃の研鑽を怠らないようにしたいものです。

 

     田中祐貴先生            朝日山一男先生

 最後に、3日間18単位をすべて取得した者は11名でした。今年度は多岐にわたる内容の講演が行われ充実した3日間だった。また皆様からいただいた貴重なアンケートを参考に、来年へ向けてより多くの方に参加していただけるよう検討していきます。皆様のご協力ご参加ありがとうございました。

【広報部長 木村慎一:報】

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