2023/08/13
《夏期大学講座 第1日目》
令和5年7月23日(日)令和5年度夏期大学講座が開講した。今年のメインテーマは「ニーズに合った鍼灸マッサージ師を目指して」。開講式後、午前は明治国際医療大学 鍼灸学部教授 廣正基先生による「高血圧症に対する鍼灸治療」、午後からは理学療法士 松本元成先生による「肘・手関節の筋肉とスポーツ障害の関連について」と題した講演を行った。
午前の講演1では高血圧の病態をまず教わった。血圧とは血管内の血液が血管壁にかかる圧力で、心拍出量×末梢血管抵抗で求められる。血圧は絶えず変動し、計測したときの数値が高値であったとしても、高血圧症であるとは限らない。毎日同じ時間に条件を合わせて計測することが必要である。また、白衣高血圧や早朝高血圧、夜間高血圧、ストレス高血圧などもあるので気を留めておきたい。高血圧であっても、自覚症状があることが少なく、突然、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすサイレントキラーとも呼ばれている。高血圧を引き起こす原因がはっきりとしている二次性高血圧症は全体の10%程度である。これは糸球体腎炎、腎盂腎炎や原発性アルドステロン症など疾患が影響している。医療機関での治療が必要であるため、高血圧で来院されたときにはこのような疾患の有無も確認がいる。
鍼灸マッサージの施術で原因が不明の本態性高血圧に降圧の効果を発揮する。廣先生は現在、きららの湯若狭鍼灸院に勤務されている。ここで温泉入浴前後の血圧の変動を調査された。温泉でもかなりの割合で収縮期血圧の下降がみられた、ただし、脈拍は増加した。また、末梢(特に下腿)への鍼刺激の前後での血圧の違いも調査した。結果は血圧、脈拍ともに下降した。つまり、鍼刺激で血圧が下がる効果と副交感神経を優位にし、脈拍を抑える効果も得られるのである。我が国の高血圧症罹患者は4,300万人いるという。隠れ高血圧症も含めば、かなりの人数になる。治療費を抑えるためにも、予防医療である鍼灸マッサージが高血圧症にも効果があることを認識し、患者の健康増進に役立たせたい。
午後からの講演2では肘・手関節に関係する解剖や運動を整理し、肘の内側、外側の痛みについて学んだ。肘の内側の痛み(上腕骨内側上顆炎、野球肘)では屈筋群のオーバーユース、外反ストレスによる靭帯損傷、尺骨神経由来の痛みが多い。外側の痛み(上腕骨外側上顆炎、テニス肘)では手関節を背屈させる動き、回内作業や握る作業などによる筋肉、特に短橈側手根伸筋のオーバーユースが原因であることが多い。パソコン作業もそれに含まれるため、デスクワーク業務者に上腕骨外側上顆炎の発症率が高い。
実技として徒手検査を項目ごとに教わった。内側痛では内側靭帯へのストレステスト、前腕屈筋へのストレステスト、尺骨神経へのストレステストを行い、肘の痛みの原因を見つけ、野球をしている子どもであれば、離断性骨軟骨炎(OCD)も疑いに入れ、投球を規制する指導もしていく必要がある。また、患部外、股関節や肩甲骨、胸郭の動きを確認し筋緊張を緩めることで、肘への負担が軽減する。外側の場合も同様に痛みの評価のための徒手検査を行い、ストレッチ、テーピングも教わった。
参加者は積極的に質問され、講師も丁寧に対応してくださった。180分中2回休憩をとったが、講師は休憩中も質問を受けておられたので、お疲れのことであっただろう。デスクワークされている方の割合が多いことには驚いたが、今の時代パソコン作業は必須であるため、多くの方が発症する可能性がある。しっかりと身に着け、鍼灸マッサージで効果を実感していただくことが必要である。また、デスクワークされている方への発症予防にもつなげていける講演内容であったと思う。
【報告者:加古川地区 山口尚代】