2025/03/27

神戸ブロック臨床研修会

令和7年1月26日(日) 13時30分より鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部鍼灸サイエンス学科 准教授 本田達朗 先生をお招きし、「【M-Test】の理論と臨床実践テクニック(初級)」との演題で講義と実技指導を行なっていただきました。今回は会場とオンラインのハイブリッド開催とし、体調不良等による欠席者もありましたが、会場14名、オンライン6名の合計20名が受講しました。

 【M-Test】は「痛み」「突っ張り感」「重さ」「だるさ」といった身体に感じる異常所見や違和感を誘発する動作から、アプローチする面(経絡や筋)や点(経穴)を特定し、それらの経絡経穴や同一面上にある硬結等の異常所見を正常な状態へ改善することで身体の動作やバランスを整える療法です。そして、身体動作と経絡をどのように結びつけていくのか?ということですが、これには手足の三陰三陽経の経絡流注を知っておく必要があります。経絡図に描かれている姿位、いわゆる「気をつけ」の姿勢が基本姿勢で、手足それぞれの三陰三陽経を前面、側面、後面に分類します。上肢であれば前面は肺経と大腸経。側面は心包経と三焦経。後面は心経と小腸経となり、下肢では前面は脾経と胃経。側面は肝経と胆経。後面は腎経と膀胱経といった分類となります。大腿部では腎経は内側前方へ流注しますが、ここでは後面に分類されます。

そして、【M-Test】では簡単な33種類の動作から、動きの悪い動作をチェックしていきます。そして、その動きが悪くなっている動作を行う時に伸びにくくなっている面・経絡がどこかというように特定していきます。例えば上肢の前方挙上、つまり肩関節屈曲動作が行いにくい場合は伸展される後面の少陰心経と太陽小腸経が施術対象経絡という具合です。施術対象経絡の選定ができたら、次はその経絡中の経穴に施術していきます。【M-Test】では基本になる経穴は手足の三陰三陽経にそれぞれ2穴あり合計で24穴が基本穴になります。この24穴はいずれも五兪穴で、それぞれの経絡上の2穴は対象経絡五行分類と同一穴を自経穴、その経穴の母穴と子穴を対象経穴とします。例えば、手の太陰肺経であれば五行では金に属しますから自経穴は経金穴の経渠、母穴は兪土穴の太淵、子穴は合水穴の尺沢になります。陽経は五行配当がズレますので、同じく五行の金に属する陽明大腸経では自性穴は井金穴の商陽、母穴は合土穴の曲池、子穴は栄水穴の二間となります。これらの経穴に毫鍼や円皮鍼や灸、あん摩・マッサージ・指圧師の有資格者であれば指圧などを行い、スムーズな動きができるよう施術していきます。本田先生はあん摩・マッサージ・指圧師の免許もお持ちということで、刺激の仕方は特定の刺激に固執せずに複合的に行なった方がよいとお話されていました。スポーツ選手と関わることが多かった経験からそのような考えに達したともお話されていました。また、アプローチする経絡が特定できれば経穴のみだけでなく、その経絡上の筋肉所見にたいしてもアプローチすることは有効であるともお話されていました。

今回は初級講座ということで【M-Test】の基本的な部分をお話と実技指導していただきました。基本的なアプローチで症状が軽減しない場合はさらに施術対象の経絡や経穴の運用方法の応用があるとのことです。そのあたりの内容は中級・上級講座でご指導いただけるとのことですので、会員の皆様のご希望があれば中級・上級講座の企画をしたいと思います。

あと、研修会の終盤に本田先生がお話された内容で印象に深く残っていることがあります。それは本田先生が大学の臨床に来られていた患者さんで治療経過がよろしくない方があり、セカンドオピニオンを進めた結果、大学病院でALSの診断を受けた患者さんがあったとのお話でした。その患者さんは以前から整形外科にはかかっていたそうですが、通院していた「整形外科の先生に悪いから」と言って当初はセカンドオピニオンを渋っておられたそうです。それで、本田先生が「セカンドオピニオンは悪いことではないから」と説得して、三重大学病院を受診し上記の診断となったということでした。施術者・治療家は自身の技術を磨き、その技術に自信を持って患者さんを診察すべきだと思いますが、その技術に固執したり慢心し、視野が狭くならないように肝に銘じて日々の臨床に当たりたいと思います。

【報告者 神戸地区:井上和哉】

2025/01/09

《西宮地区講習会》

令和6年11月17日(日) 西宮市関西盲人ホーム昭和寮に於いて、西宮鍼灸マッサージ師会の研修会が開催されました。加古郡稲美町「はりきゅう尚庵」の山口尚代先生を講師にお招きして、テーマは「お灸療法 知熱灸を取り入れよう!」です。西宮市だけでなく市外からの先生も含めて15人の参加でした。

 最近お灸の良さが見直され夏期大学でも取り上げられてはおりますが、使われるお灸はほとんどがセンネン灸などの台座灸です。モグサを指先で捻って直接体に据える透熱灸や知熱灸は、開業鍼灸師の間でもあまり使われておらず、聞いたことはあるけど見たことはない、とか知っているけれど使ったことがない、と言った先生方がほとんどなのが現状だと思います。山口先生は大阪の松浦鍼灸大学堂で5年間、お灸を中心とした鍼灸臨床の修行をされ、その後ご自身の鍼灸院でもお灸を活かした施術をされています。

 前半はパワーポイントを使って、お灸についての説明や臨床においての使い方、よく使うツボの解説などをしていただき、後半は普段使っているお灸のセットを使っての実技をしていただきました。模擬患者役をされた先生は知熱灸を受けたことがない方で、山口先生のお灸を体験して「これが本当のお灸なんですね!」と驚かれた様子でした。山口先生の知熱灸は、半米粒 米粒大のモグサを据えて線香で火をつけ、それが八分くらい燃えたところでその上に次のモグサを重ねるというやり方で、これを5壮から10壮くらいまで繰り返します。1壮ずつ消すやり方に比べはるかにスピーディーで、手際の良い施術でした。実際に寝違えて首が痛いという人に、この知熱灸をすると首の痛みが軽減して可動域が広がったというのも目の当たりにすることができました。

 最後は分かれてお互いに練習をしましたが、当然のことながら上手く出来ず、山口先生の技術の高さを認識いたしました。その翌日から私の鍼灸院でも(山口式の)知熱灸を取り入れています。初めのうちは手際が悪く何人かの患者さんに熱い思いをさせてしまいましたが、施術後に肩や腰が軽くなったと言った反応がありましたので、これは効果があるなと実感しているところです。

 鍼灸院という看板を掲げているにもかかわらず、お灸はあまりしていない先生がほとんどだと思います。お灸はとても効果があるだけでなく、お灸を据える時間が患者さんとのコミュニケーションになるとこや、お灸の香りや煙が漂っている雰囲気が癒しの空間を作ります。山口先生のお灸愛に触れて、私もそのスタンスがとてもいいなと思いました。私の鍼灸院もお灸の香りが漂う憩いの場にしたいと思います。お忙しい中にもかかわらず資料を準備してご講演いただいた山口先生ありがとうございました。またご参加の先生方お疲れ様でした。これからも鍼灸マッサージを盛り上げて行きましょう!

【報告者 西宮地区:杉輝章】

2025/01/09

《姫路ブロック臨床研修会》

 令和6年11月17日(日)午前10時より姫路市民会館5階第1教室にて、宝塚医療大学講師の岡田岬先生にお越しいただき『消化器疾患と自律神経の関係~鍼灸治療のメカニズム~』を講演していただきました。岡田先生は鍼灸師の免許を取り、臨床現場を経て研究の道に進まれた方です。鍼灸がどのように身体に影響をもたらしているのか興味を持たれ、ラットを用いて鍼灸のエビデンスを大学で研究をされています。

■消化器と自律神経:神経系の基本では中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(体性神経系・自律神経系)の大きく二つに分かれる。そして末梢神経系は体性神経系と自律神経系に二分される。その自律神経系もまた求心性(内臓求心性神経)と遠心性(交感神経・副交感神経)に二分される。内臓求心性神経は内臓感覚を脳や脊髄へ伝える神経であり、交感神経や副交感神経と同じ神経束内を並走する。内臓感覚は臓器感覚と内臓痛覚に分かれる。臓器感覚(空腹、口渇、便意、尿意)は主に迷走神経・骨盤神経といった副交感神経を通る。内臓痛覚は主に交感神経を通る。消化管に分布する自律神経のうち、交感神経は『闘争または逃走』の機能を有し内臓の消化機能を抑制し骨格筋にエネルギーを送る。一方の副交感神経は『休息と消化』の機能を有し消化機能を昂進させる。特に内臓求心性神経は迷走神経を通っていることもあり、耳の穴付近(迷走神経が分布する)の刺激が効果的である。例えば、耳を温めることや、テイ鍼などの柔らかい刺激をすることで、自律神経を安定させ、内蔵を安定させる効果が期待できる。

■消化器に対する鍼のメカニズム:鍼刺激は胃運動にどのような影響を与えるのか?手、足などの末端部からの刺激は副交感神経を使っており、胃の運動を促進させる。逆に体幹からの刺激は交感神経を使っているために胃の運動は抑制される。具体的には『曲池や足三里』などの手足末端のツボ刺激は胃運動を促進させ、『膈兪、肝兪、脾兪』のいわゆる胃の六つ灸は体幹のツボ刺激であり胃の運動を抑制させる。よって、消化不良などの胃の動きが悪い時には曲池や足三里を使うことが効果的であり、逆に胃痛などの過剰な刺激を落ち着かせる時は胃の六つ灸を使うのが効果的となる。胃痛時に胃の六つ灸を使うのが効果的と述べたが、大学での授業時に「何故、胃の六つ灸に胃兪が入っていないのか?」という質問を学生から受けたことがある。これに関して体のデルマトームを参照にすると、Th12(胃兪)の神経支配は胃の辺りを支配をしていないことが関係していると思われる。

【報告者 姫路地区:佐藤暢彦】

2024/12/02

《第34回 加古川ツーデーマーチ》

11月9日(土)、10日(日)の2日間、加古川市役所を中心とした加古川市内にて、「第34回加古川ツーデーマーチ」が開催された。距離は20km、10km、5kmの3種の設定がされ、年代問わず参加がしやすい様設定がされていた。コースの各所に設置されたチェックポイントでも様々なイベントが開催され、会場全体としてゆったりと楽しんでいる空気が流れていた。事前の予報では荒天の可能性が示されていたが、2日間共に快晴で穏やかな日差しの中での開催だった。

 今回は、スポーツマッサージに加えて、鍼での施術も参加者が選択できる準備をしていた。また、家庭でのケアのための試供品も提供いただいていたため、施術を受けた方々には施術後に渡していた。

 1日目は、ゴール後のウォーカーに対する施術が中心で昼頃から終了時刻である16時頃まで約80名の方が施術を受けた。運動直後なのもあってかスポーツマッサージの希望者が圧倒的に多かった。また、過去の開催時に参加していたウォーカーのリピートも多く見られた。2日目になると、まずは両日参加のウォーカーの出発前の施術希望が増えた。中には10歳以下の児童も含まれ、身体のケアの重要性がより幅広い世代に認識されつつあるのではないかと感じさせた。また、一日目に比べると鍼での施術を希望するウォーカーが圧倒的に増えた。1日目の疲労が残った状態で2日目に参加したウォーカーが多かったようで連日の施術希望も多数見られた。鍼希望者の多くが鍼での治療を受けるのは初めてだったようだが、受けた人の多くが身体が軽くなったことを実感しとても喜んでいただけたようだった。施術中に「〇〇市で鍼灸をやっている治療院はあるの?」といった質問が出ているのも散見した。一度治療を受けたことでウォーカーの中で鍼灸が治療の選択肢に含まれるようになっていっているのではないかと感じられ、とても充実したイベントだった。

【報告者 北播磨地区:賀内淳一郎】

2024/12/02

《第49回にしのみや市民祭り》

西宮鍼灸マッサージ師会では、毎年市役所前広場で開催される西宮市民まつりへ出店しています。以前は、市民の方に無料マッサージ体験をしてもらっていましたが、スタッフ不足と費用対効果の関係で、一昨年から配布物(啓蒙チラシ、会員の施術所リスト、ツボのイラストチラシ、せんねん灸とコリスポットの試供品)のみにしていました。

今年は市民の方一人ひとりに接客をして、主訴を聞き、お灸かコリスポットを選んで体験をしてもらいました。

お灸は初めてで怖いけどやってみたいとの声が多く、65人にせんねん灸の体験をしてもらいました。ほんわりと心地よかった。家でも是非やってみたいがどこで買えるのか?昔やっていて押し入れの奥にしまっているが、出してまたやろうと思う。などの声が聞こえました。

 スタッフは6名でしたが、来場者が途切れることなく接客に追われました。今年もせんねん灸とセイリンから試供品を提供してもらい、啓蒙チラシとともにお渡しし、喜んでいただけました。

 セルフケア用のテニスボールマッサージ用のボールは例年とても人気で、2個連結50個と1個を150個用意し、使い方のチラシとともにご自由にお持ち帰りくださいとしたところ、またたく間になくなりました。

来年は西宮鍼灸師会と合同で出店できるよう調整していきたいと思っています。

開催日:令和6年10月26日(土)11時~16時

会員スタッフ:6名

お灸体験:65名

凝りスポット体験:45名 

【報告者 西宮地区:瀧川敦子】

2024/11/06

《令和6年度 たるみ生き活き保健福祉フェア》

令和6年10月4日(金)9:30より垂水区社会福祉協議会主催の「たるみ生き活き保健福祉フェア」の一環として「はり・マッサージ体験施術」を行った。今年度からは神戸地区と垂水地区が合併したことにより神戸鍼灸マッサージ師会としての体験施術実施となった。

 施術者14名(はり担当5名、マッサージ担当9名、ベッド8台(はり3台、マッサージ5台)体制で実施し、受療者数は48名(はり18名、マッサージ30名)だった。当日のキャンセルや当日申し込み等があり結果的には当所予定受療者数の体験人数となった。

 私は鍼施術を担当し、6名の施術を行った(1名あたり約30分)。受療者は40代1名、50代1名、60歳以上4名とかなり高齢者層に偏った形だった。事前予約により施術枠がほぼ埋まっていたこともあり会場は盛況だった。施術させていただいた方にお聞きすると、半数以上の方が鍼施術は初めてということだった。その他の方は転居してきて鍼灸院を探しているがどこへ行けばいいかわからないという方もあった。1人あたりの施術時間は30分となっていたが、初診の上、施術後のフォローができないこともあり、効果を実感できる程度の刺激量とし、身体の動きの変化が感じられるよう動作のビフォーアフターを感じていただけるように施術を行なった。

 今回、この保健福祉フェアでの体験施術にはじめて参加し、後ほど行なった垂水区社会福祉協議会の方との次年度に向けてのミーティングにも出席し、様々な検討課題があるように感じた。コロナ禍を経て、5年ぶりに再開した体験施術であったが、施術体験希望者への告知、募集方法、施術枠の設定方法や当日の運営に至るまで再検討が必要ではないかと思う。

 このような各種のイベントでの体験施術やスポーツイベントにおける医療ケアの一端としてのボランティア施術は鍼灸マッサージ施術の啓蒙普及にも寄与することを期待し、できる限り参加したいと思う。また、体験施術等でご縁をいただいた方がその場だけでなく、どこかの施術院で継続して受療していただけるよう仕組みを考えたいと思う。

【報告者 神戸地区:井上和哉】

2024/10/01

《令和6年度 夏期大学講座2日目》

令和6年9月8日(日)午前の部では『アスリートのコンディショニングに東洋医学を活かす』の演題で明治国際医療大学鍼灸学部 谷口剛志先生にご講演いただいた。

アスリートのコンディショニングで『治未病』の概念を活用して精神面・肉体面・健康面をアプローチするのは、斬新的で大変良かったと思います。

アスリートのコンディショニングを主観的な指標(VAS)と客観的な指標(唾液コルチゾール濃度)で捉えて、その上で募穴診を行い、圧痛を指標にコンディショニングの変動を捉えることができるのかを検証したのは目新しい情報です。スポーツ鍼灸の発展を願います。

 

午後の部では『冷え性の診断と治療』の演題で関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二先生にご講演いただいた。

臨床の場面では、冷え性の主訴よりは愁訴で来院されると思います。患者の満足度向上に以下のセルフケアがヒントになります。

今回、教えて頂いた冷え性の対策でセルフケアとしては、湯たんぽを大腿部に置いて作業をすると足が冷え難い坐業でない場合、使え捨てカイロ固定用のホルダーを活用して、後頚部や肘部に当てると手の冷えの程度が軽減する。

就寝前の足三里、三陰交、湧泉への間接灸を続けると良い。

【報告者 神戸地区:伊藤傑】

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