2024/11/06

《令和6年度 たるみ生き活き保健福祉フェア》

令和6年10月4日(金)9:30より垂水区社会福祉協議会主催の「たるみ生き活き保健福祉フェア」の一環として「はり・マッサージ体験施術」を行った。今年度からは神戸地区と垂水地区が合併したことにより神戸鍼灸マッサージ師会としての体験施術実施となった。

 施術者14名(はり担当5名、マッサージ担当9名、ベッド8台(はり3台、マッサージ5台)体制で実施し、受療者数は48名(はり18名、マッサージ30名)だった。当日のキャンセルや当日申し込み等があり結果的には当所予定受療者数の体験人数となった。

 私は鍼施術を担当し、6名の施術を行った(1名あたり約30分)。受療者は40代1名、50代1名、60歳以上4名とかなり高齢者層に偏った形だった。事前予約により施術枠がほぼ埋まっていたこともあり会場は盛況だった。施術させていただいた方にお聞きすると、半数以上の方が鍼施術は初めてということだった。その他の方は転居してきて鍼灸院を探しているがどこへ行けばいいかわからないという方もあった。1人あたりの施術時間は30分となっていたが、初診の上、施術後のフォローができないこともあり、効果を実感できる程度の刺激量とし、身体の動きの変化が感じられるよう動作のビフォーアフターを感じていただけるように施術を行なった。

 今回、この保健福祉フェアでの体験施術にはじめて参加し、後ほど行なった垂水区社会福祉協議会の方との次年度に向けてのミーティングにも出席し、様々な検討課題があるように感じた。コロナ禍を経て、5年ぶりに再開した体験施術であったが、施術体験希望者への告知、募集方法、施術枠の設定方法や当日の運営に至るまで再検討が必要ではないかと思う。

 このような各種のイベントでの体験施術やスポーツイベントにおける医療ケアの一端としてのボランティア施術は鍼灸マッサージ施術の啓蒙普及にも寄与することを期待し、できる限り参加したいと思う。また、体験施術等でご縁をいただいた方がその場だけでなく、どこかの施術院で継続して受療していただけるよう仕組みを考えたいと思う。

【報告者 神戸地区:井上和哉】

2024/10/01

《令和6年度 夏期大学講座2日目》

令和6年9月8日(日)午前の部では『アスリートのコンディショニングに東洋医学を活かす』の演題で明治国際医療大学鍼灸学部 谷口剛志先生にご講演いただいた。

アスリートのコンディショニングで『治未病』の概念を活用して精神面・肉体面・健康面をアプローチするのは、斬新的で大変良かったと思います。

アスリートのコンディショニングを主観的な指標(VAS)と客観的な指標(唾液コルチゾール濃度)で捉えて、その上で募穴診を行い、圧痛を指標にコンディショニングの変動を捉えることができるのかを検証したのは目新しい情報です。スポーツ鍼灸の発展を願います。

 

午後の部では『冷え性の診断と治療』の演題で関西医療大学保健医療学部はり灸・スポーツトレーナー学科 坂口俊二先生にご講演いただいた。

臨床の場面では、冷え性の主訴よりは愁訴で来院されると思います。患者の満足度向上に以下のセルフケアがヒントになります。

今回、教えて頂いた冷え性の対策でセルフケアとしては、湯たんぽを大腿部に置いて作業をすると足が冷え難い坐業でない場合、使え捨てカイロ固定用のホルダーを活用して、後頚部や肘部に当てると手の冷えの程度が軽減する。

就寝前の足三里、三陰交、湧泉への間接灸を続けると良い。

【報告者 神戸地区:伊藤傑】

2024/08/01

《令和6年度 夏期大学講座1日目》

令和6年7月14日(日) 10時30分より令和6年度夏期大学講座1日目が開催された。午前の部は【お灸堂】院長 鋤柄誉啓 先生をお招きし「灸治療院の診療及び活動のご紹介」との演題でご講演いただいた。

 鋤柄先生が普段行っておられる施術のご紹介とともに患者といかに寄り添っていくかということについての工夫がよく伝わってくる講演だった。講演の中で私が印象的に感じたこととして、鋤柄先生が施術のことを「お手当」と表現されていた点と施灸による身体変化をきちんと患者と共有していた点である。医療の原点は症状に対して手を当てることから始まったと言われており、まさに、それを実践されているということだろう。また、昨今は慢性症の患者が増加しており、症状寛解にすぐに至らないケースが多いが、身体の変化をきちんと認識し、それを積み重ねていくことで身体の状態が改善していくことを丁寧に伝えておられるとのこと。患者目線で施術者が歩み寄り、患者に寄り添う施術を継続して実践されている。このようなことは施術者としてのキャリアが長くなると希薄になっているのではないだろうか。施術者としてのスタンスを再考するいい機会になったと思う。

午後の講演は【京都四条からすま鍼灸院】中島美和 先生をお招きして、「頚肩上肢症状に対する鍼治療」との演題による講演と実技供覧だった。

鍼灸施術は様々な技法、手法があり、選択肢が多いという点では強みになる一方、それらは先人の経験に基づく伝道であり、体系化されておらず、鍼灸施術の受療率が上昇しにくい要因となっている。今後はさらに基礎研究がなされ、EBMに基づく医療技術であることがもっと発信されるべきと中島先生は述べておられた。

 上記を踏まえ、頸肩上肢症状の発症要因として最も多い、頸椎の退行変性を基盤とする運動器障害について、症候、疾患の成り立ち、さらには治療法を理解する上で必須となる、頸椎の機能・解剖、診察技法等についての講義が行われた。特に神経分布については詳しく解説していただき、神経へのアプローチでは、どの部位に鍼をどの方向に、どの程度の深度で刺入すれば効果が期待でき、また安全に刺鍼できるか等、非常に詳しく講義していただいた。多くの受講者が養成施設を卒業して長い時間が経過しており、また養成施設での解剖学の講義よりも詳しく、脳に汗をかいた方も多かったのではないだろうか。知識の再認識と学び続けることの重要性を再確認するよい機会となった。

 また、実技供覧においてはモデル患者に対し、講義でお話いただいた刺鍼部位に実際に刺鍼し、鍼の刺入方向や深度が確認できた。今回は時間の制約もあり、視力の弱い方には触知して確認する等は難しかったが、詳しく説明をしていただきながらの実技供覧でイメージはできたのではないだろうか。

 私的には解剖学の知識は有害事象を招かないためや、他の医療業種従事者との情報共有において共通用語を理解、使用することは不可欠と考えるが、本来の東洋医学の強みを活かすためには、現代医学の知識に経絡経穴や東洋医学の臓器感などが融合できてこそ本来の力を発揮できるのではないだろうか。今後の研究に期待したい。

【報告者:神戸地区 井上和哉】

2024/07/01

《令和6年度 神戸地区講習会》

令和6年6月16日(日) 13時30分より德岡里実 先生をお迎えして「【さとう式リンパケア】入門~「触れる」ことの深さを知る~」との演題で講義と実技指導を行っていただきました。德岡先生の雰囲気と柔らかい話し方や声のトーンから終始和やかな講習会となりました。

 【さとう式リンパケア】は歯科医師である佐藤先生が顎関節症の治療の一環として行っていた咬筋スパズムに対するマッサージが起源だそうですが、接触する指の圧力を少なくした方が治療効果が高いことを発見されたそうです。触れる圧力を少なくすることで、末梢の微小循環血液量が改善され、脈管外の間質液の循環が改善されることで、筋ポンプ機能などが改善され、筋緊張が解消されていきます。間質液は神経伝達などにも関与しており、神経系の調整にもなります。

 また、適度な触覚刺激はオキシトシンやセロトニンといった脳から分泌される物質の分泌を促すことも知られており、これらは「幸せホルモン」とも言われ、肉体的な不調を整えるだけでなく、人そのものを豊かにしてくれるメソッドということになります。

 また、【さとう式リンパケア】では口腔、胸腔、腹腔の三つの腔を重視しており、腔を立てるよう調整をしていくそうです。上述の筋緊張を取ることは姿勢を整えることになり、正しい姿勢を取ることで三つの腔が正常な形となり不良姿勢の解消はもとより身体が緩むことで血流やリンパ還流や神経伝達などがスムーズになり本来の状態になっていくということでした。

 実技のデモンストレーションにおいてはモデル患者の状態把握から施術を施した後とのビフォーアフターで状態変化がモデル患者にも体感できたようでした。また、少数グループでの実技練習においては先生にグループを巡回していただいて、多くの受講者が先生の施術を体験し、その触覚刺激量の少なさに驚嘆していました。

 【さとう式リンパケア】については佐藤先生のyoutubeチャンネルにも多くの動画が掲載されていますが、この刺激量の感覚は動画ではなかなか理解できないと思いますし、また、大人数でデモンストレーションを見るだけでなく、実際に体感することの重要性を再認識した講習会となりました。今回、受講された方には是非、日々の臨床において本講習内容を活かしていただければ幸甚です。

【報告者:神戸地区 井上和哉】

2024/05/02

《神戸地区講習会 第2弾》

開催日時:令和6年3月3日(日) 13:30~16:30

会場:神戸市中央区文化センター11階 会議室1001号室

講師:学校法人 呉竹学園 臨床教育センターManager 船水隆広 先生

講題:「メンタルヘルスや美容に安全で効果的な鍉鍼テクニック【TST】の理論と実技」


 去る令和6年3月3日13時30分より神戸市中央区文化センターにて学校法人 呉竹学園臨床教育センターマネージャー 船水隆広 先生をお招きして「メンタルヘルスや美容に安全で効果的な鍉鍼テクニック【TST】の理論と実技」との講題で講義と実技供覧を行っていただきました。

 講義の冒頭に船水先生が関わっておられる様々な活動のご紹介があり、教育現場だけでなく、海外も含めてご活躍されていることに感心させられました。その中で、鍉鍼を使用されるようになった経緯のお話がありました。船水先生はうつ病やパニック障害などメンタルヘルスにご興味がありそういった患者も多く施術されていたそうです。メンタルを患っている方は皮膚が過敏になっている方も多く、刺入するタイプの鍼は手技としてはソフト刺激であったとしても受け入れてもらえないことが多く、であればと鍉鍼を使用されるようになったということでした。さらに、現在流通している鍉鍼は先端が細く、皮膚への刺激が強いこともあり、オリジナルの鍉鍼を作成するに至ったと。また、鍉鍼のみで施術が完結するような施術を行っているような文献もなかったことからオリジナルの手技を構築するに至ったとのことでした。

 メンタルを患っている方の治療の一環として顔の血色をよくしたり、表情を作るために口角を上げやすくする目的などで顔面へのアプローチを行うことで患者の状態が一段階改善することにもなり、同時に美容的なアプローチの理論構築にも繋がっていったとのことでした。

 船水先生は人体解剖も数多くされており、顔面についてはたくさんの筋肉がついているが、筋層はとても薄く、血流が悪くなると状態がすぐに悪くなるため、気血の流れを改善し、顔面の血流を改善し、筋や皮膚の状態を改善していくとのことでした。

 船水先生が考案された鍉鍼についてもご紹介いただきました。主に使用される鍉鍼はソフトな形に加工された鍼先と反対側には球状になっており、鍼体には溝が切ってあります。気を流して治療していくと説明をすると気がわからないという施術者が必ずいて、そういった方でも気を流すことができるようにするために溝が切ってあるそうです。船水先生は「気は固有振動数」という考えをお持ちで、鍼体の溝を指を滑らすことで振動が発生し、気が分からなくても気を流せるということだそうです。気は生命体の持つ波動の一種だと私は考えているのですが、固有振動数という考えは共感や新鮮さを感じました。

 後半の実技供覧ではモデル患者に対し、船水先生がされている基本的な手順と、それぞれの部位に、どのような手技を施していくのかということを詳しく説明していただきました。患者の状態によって施術部位や刺激量など変化はすると思いますが、基本的には胸腹部、四肢、背腰部、頭頸部、顔面とまさに全身治療でした。

 非常に内容の濃いご講演で消化不良になっている方も少なくないと思いますが、鍉鍼ならではの手技や鍉鍼だからこそ行いやすい部位など日々の臨床にプラスしていただければ幸いです。

 今回も会場とオンラインのハイブリッド方式での講習会開催といたしました。会場準備、撮影等、ご協力いただいた先生方に感謝申し上げます。

【報告者:神戸地区 井上和哉】

2024/04/02

《神戸ブロック臨床研修会》

 令和6年2月23日(金)神戸市立総合福祉センターにおいて、高齢化社会における伝承医学の役割「不老長生と道教思想」をテーマに、ベーネ御影治療院院長 呉光崑(ごう みつる)先生にご講演いただいた。

 今回のテーマ「不老長生と道教思想」は鍼灸を学ぶ以前から関心があったので楽しみにして参加しました。そして期待にたがわず有益な研修会になりました。 講師の呉光崑先生は御本人が言うように「胃の氣」が充実したエネルギッシュな方で、迫力のある波動が伝わりグイグイと惹きつけられ3時間の研修会もあっという間でした。

 前半は講義で「不老」と「長生」のそれぞれの意味を中国伝承医学の観点からわかりやすく解説され、後半は人迎気口脈や九道の脈を切り口に経筋治療の説明、さらには呉先生が普段行われている鍼治療の一部を見せていただきました。

 講義も実技もそれぞれ素晴らしく学ぶところも多かったのですが、最も印象に残りかつ呉先生の訴えたかったことと推察されるのは、資料にあった「傷寒論」の序文の精神だと思いました。「医術の研究に心をそそがず、自らの身を養生しない」、当時から現代に至るまで軽佻浮薄な風潮に対して「医」に関わる者として肝に銘じておきたいことだと思います。そのために「古典」に立ち返り学ぶことの大切さも感じています。

 今回も内容の濃いとても充実した研修会でした。講師の呉先生、そして毎回充実した研修会を企画運営して下さるスタッフの皆様、ありがとうございました。

【報告者:一般 脇岡望文】

2024/03/02

《世界遺産姫路城マラソン2024》

姫路城マラソン2024 マッサージボランティアに参加して

 令和6年2月11日に世界遺産姫路城マラソン2024が開催されました。今回から鍼灸マッサージ師会によるマッサージボランティアが再開されたので初めて参加させていただくことになりました。コロナ禍のため久しぶりの機会となったようです。

 集合場所から現地に移動して、まずは会場のセッティングから。皆さん手慣れた様子で作業されていました。まだランナーが帰ってくるまで時間があるので、私を含めて初参加のメンバーはマッサージ手順のおさらいをしてもらい準備を整えます。

 マッサージ会場が地下駐車場のため外の様子は分かりませんが、昼近くに走り終えたランナーが戻ってくるようになりいよいよマッサージ開始。時間と手順を意識して確実に施術していきます。ランナーは各地から来られていて色々なお話を伺う事も出来ました。最初はまばらでしたが、時間が経つにつれて待合スペースがいっぱいになる位に多くの方に来て頂きました。慣れてくると他の方の施術の様子も見られるようになり、各先生方は基本の手順を踏襲しつつも体の状態に応じてアレンジされており勉強にもなりました。また、今回から鍼も受けられるベッドを設定していたのですが、大変人気となっており鍼需要の高まりを実感しました。

 過去の例として足がつる等の事例は聞いていましたが、気温や天候に恵まれたためか特に問題はなく終了。撤収作業を終え6時間ぶりに地上に戻った時には心地よい充実感がありました。また今後も機会があれば参加したいと思います。

【報告者:姫路地区  田中尚人】

 

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