2023/05/01
《神戸ブロック臨床研修会》
開催日時:2023年2月19日(日) 13:30~16:40
会場:あすてっぷKOBE セミナー室3
講師:三都ブレインクリニック 院長 久保重喜 先生
講題:脳外科医が伝える新しい診断法『フォトタッチメソッド』とその先の治療法~鍼灸と漢方を超えて~
去る2023年2月19日(日)13時30分より3年ぶりとなる神戸ブロック臨床研修会を開催いたしました。今回の臨床研修会は三都ブレインクリニックの久保医師にお越しいただいて「脳外科医が伝える新しい診断法『フォトタッチメソッド』とその先の治療法~鍼灸と漢方を超えて~」と題して、会場・オンライン・アーカイブ受講のハイブリッド方式で開催いたしました。
久保医師は脳外科医としても2000以上の手術や大学病院や多数の病院において診療に当っておられ、豊富な経験と知識をお持ちです。また、東洋医学にも精通されており、漢方薬処方や鍼治療も行なっておられます。また、人間の微細エネルギー場を整えるといったことや、バッチフラワーレメディーやホメオパシー、最近では易なども診察に取り入れられているとのことでした。
講題にある「フォトタッチメソッド」は「患者に漢方の写真を触ってもらい、患者に起こる気の変化を患者及び医師が感じて、適切な漢方を選択する方法」ということで、久保医師が様々な勉強会や書籍などから研鑽を積まれ、写真に触れることで気の変動が起こることを発見され、診断法として確立されたとのことでした。
基本的には対象物の写真に触れて気の変動を感知するようですが、写真を見る、リストに書かれた文字に触れる、音で聞くといったことでも気の変動が起こるとのことで、診察の方法の幅がさらに広がります。
また、フォトタッチメソッドを行うことで、漢方薬や西洋薬、薬の処方量などの診断も可能ですし、他にも患者に合った色や食材、パワーストーンなど、その人に合う、合わないといったことも診断できるとのことでした。他にもお示しいただいた症例では直接コミュニケーションが難しい乳幼児では母親を通して、ペットの犬では飼い主を通して遠隔診断も可能とのことでした。
そして、最後に最近取り入れられている「易」についてご紹介いただきました。『易経』は東洋思想(医学を含む)の基礎の基礎であり、森羅万象の状態・変化を捉えることが出来るということで、フォトタッチメソッドで漢方薬の処方などをしているが治療効果がいまひとつといった場合に易を行なうことで患者が問診で話していないことや気付いていない原因になるような影響を調べることができるということでした。
前半の講義の後、休憩を挟んで久保医師にご用意いただいた食材リストを使用して受講者同士でペアを組んで、実際にフォトタッチメソッドを行い、気の変化を感じ取る体験をしました。その後、久保医師がクリニックで行なっておられる診察の流れをモデル患者に対し実技供覧ということで行なっていただきました。
「気」は目に見えない、形のないものですから、感覚として感じるということになるのですが、これは術者も患者も感受性には差がありますから感じやすい人、感じにくい人がいると思います。このフォトタッチメソッドを臨床現場で活かすには、気を感じ取る感覚の鍛錬も必要でしょうし、工夫が必要だと思います。とはいえ、現役の医師が実際に臨床現場で使用している今回の診断法は鍼灸マッサージ師の診断施術にも応用できる内容でしたし受講された方には大変刺激になったのではないでしょうか。3時間という限られた時間ではありましたし、もっとお聞きしたい事はありますので、またの機会にお願いできればとの思いです。今回、貴重なご講演を行なっていただいた久保医師に改めて御礼申し上げます。
最後に、今回の臨床研修会は対面とオンラインのハイブリッド方式で開催しましたが、カメラのセッティングのためか、プロジェクターの投影像がうまく捉えられず、オンライン受講の方にはご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。また、神戸地区の役員の先生方にはいろいろとご協力いただき感謝申し上げます。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2023/03/07
《阪神北地区学術講習会》
日時:令和5年1月22日(日)10時~13時
場所:フレクシー伊丹
講演:在宅医療について
山口町あすなろクリニック院長の岡崎賢治医師にお越し頂き、在宅医療に関しての基礎知識や、医師が鍼灸師に求める治療。そして質疑応答など、もっと病理的な知識を増やして欲しいという事が理解できた他、訪問鍼灸マッサージ施術が理学療法や作業療法に施術内容がよってきていることに対して、懸念されており、局所に対しての治療はセラピストに依頼する。鍼灸マッサージには全身に対するアプローチを期待しており、元来の身体を温めたり、施術を受けている間は患者様が笑顔になり、痛みを忘れることができる事など、元々の鍼灸マッサージの良さを失わないようにして欲しいともおっしゃっておられました。我々も患者様へ対する施術のあり方を改めて見直すきっかけとなりました。
【報告者:阪神北地区 鳴坂 祐太郎】
2022/12/12
《第9回小野ハーフマラソン2022》
今回、初参加しました。マラソンの出発の合図がしてから、1時間ほどで一人入ってきたかと思えばあっという間に6床埋まり10時前から14時過ぎまでぶっ通しで7人が順繰りで施術を行いました。
最初に賀内会長から施術を教わり、ストレッチ方法(足首の向きでどこの筋肉に効くなど)や運動直後のランナーは弱めの押圧で良いと的確なアドバイスを頂いたおかげでとても勉強になりました。
まだ、使い方が慣れていなかったのか、終わった後の自身の筋肉痛がありました。他の先生の施術を見ることも新鮮でよく見て学ばせて頂きました。短時間のストレッチと直後のマッサージで次の日の筋肉痛の具合が変わってくるので、応急処置にはなりますが一所懸命させてもらいました。特にハーフを走ったランナーさんは、ストレッチがすごく効いている表情をしていて、自分では出来ない範囲までやってくれることを喜んでいるようでした。鍼灸マッサージ師会としては3年ぶりで、いつもより負傷していたランナーが多かったようです。
今回は貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございました。
【報告者:神戸地区 藤井カンナ】
2022/12/12
《神戸地区学術講習会》
去る令和4年11月23日(水・祝)に雨天が心配される中、神戸鍼灸マッサージ師会及び一般社団法人 整動協会共催にて「2022年特別講座 はじめての整動鍼 in 神戸」が兵庫鍼灸専門学校実習室とオンライン配信のハイブリッド方式で開催されました。今回の講習会は共催であること、対面とオンラインライブ配信、更に有料講習会と初めての試みであり、受講者が集まらないのではないかという不安がありましたが、整動協会のご尽力もあり、対面は定員の25名満席(当日欠席1名)、オンライン配信においては67名の合計92名のお申し込みがありました。
当日は整動協会 代表の栗原誠先生、撮影、アシスタント講師の岡本先生のお二人に群馬県伊勢崎市よりお越しいただき、13時30分より講習会を開始しました。今回は限られた時間での講習会であるため、実技を中心に講習会は進行しました。
整動鍼とは動きをツボで整えることで、運動器疾患のみならず、自律神経症状、アレルギー疾患、内臓疾患に至るまで幅広く対応できる鍼灸理論(公式website https://seidonet.or.jp/ より)です。特に身体の動きに着目することで運動器疾患への対応がガラリと変わります。「痛みの緩和」から「痛みの原因である動きの不調和を正す」という発想に切り替わることで、より根本的なアプローチが可能になります。
また、整動鍼の特徴としては革新性、即効性、再現性、シンプル、少数鍼、短時間施術といったことが挙げられます。革新性は上記にも記載しているように身体の動きに着目した点で、今までの鍼灸理論にはない着眼点であり、瞬時に動きに変化が現れることから患者、施術者双方にわかりやすく、効果判定も容易に行えます。また身体の動きの変化だけでなく、症状に対しても著効が現れることもあり必要以上に刺激をすることなく短時間で施術が完了します。そして、重要な点としてツボの位置と取穴です。整動鍼ではツボの位置がミリ単位で細かく設定されており、ツボの位置を共有することで施術者間の技術差を極力少なくし、施術効果の共有、検証を行うことで施術効果の再現性が高くなります。そのような点も踏まえ実技練習が中心の講習会となりました。
細かい理論については配布されたテキストを後ほど学習していただくようにし、栗原先生がモデル患者にまずはデモンストレーションで実際に施術を行い、その後3人一組で施術ベッドに戻り各ベッドを栗原先生が順にまわりながら取穴部位などの指導を行っていただきました。
今回は整動鍼の施術方法の一部ということにはなるのですが、①頚椎7番のスタビライザー効果 ②仙腸関節と顎関節 ③肩甲骨内上方と仙腸関節 ④肘関節と肩甲骨内上方 ⑤後頭骨下端と仙骨上端 ⑥うなじとアキレス腱 ⑧手足と腰椎について実際に鍼を行い、それぞれが身体の変化を体験できました。また、取穴の重要性を再認識したのではないでしょうか。今回の実技内容だけでもかなり多くの方の施術に適応できますし、即臨床現場にフィードバックできる内容であり、大変有益な講習会になったと思います。
最後に学術担当者として、早朝より遠方からお越しいただいた栗原先生、岡本先生に改めて感謝申し上げるとともに、当日の運営にご協力いただいた神戸鍼灸マッサージ師会の役員の先生方、会場をご提供いただいた兵庫鍼灸専門学校に御礼申し上げます。
【報告者:神戸地区 井上和哉】
2022/11/22
《第47回 にしのみや市民祭り》
2021年は動画を使う団体紹介という形での参加となりましたが、中止となる2019年までは会員総出によるマッサージ奉仕が恒例でした。
3年振りとなる今年は10月22日(土)、これまでと同じく市役所本庁舎前にて開催。当会では昨今の状況を考慮してマッサージ奉仕では無く、自治体補助券・保険や訪問施術・会員施術所の案内といった広報活動に絞り込み、少人数体制(5人)で行ないました。またセルフケアを目的にテニスボールと具体的な使い方を図示したものを作成、更にセイリン(株)とせんねん灸(株)より『こりスポット』と台座灸を準備、約170人の方に配布させて頂きました。
2019年まで同じだったブース位置は大きく移動、開催時間も短縮されての開催でしたが個別相談等、有意義な時間となりました。この結果を踏まえ、次回に向けて内容を再検討したいと思います。参加された会員の皆様、お疲れ様でした。
【報告:西宮地区 横山善人】
2022/10/22
《令和4年度 夏期大学講座》
《夏期大学講座報告》
Ⅰ.夏期大初日を終えて:広報部長 天野豊
連日新型コロナウイルス感染者が過去最高人数を更新している中、令和4年度の学術講演会(夏期大学講座)が7月24日(日)「ウィズあかし生涯学習センター7階 学習室704」にて開催された。
今年度はメインテーマに「ニーズに合った鍼灸マッサージ師を目指して」を掲げ3日間のスタートを切った。
午前の講演はタイムリーなお話しで、明石医療センター呼吸器内科部長 畠山由記久先生による「当院のCOVID-19感染症の記録~これまでとこれから~」と題して講演を拝聴しました。
明石医療センターにおける第1波から現在までの患者数や入院数、それらの年代別や重症度別等細かなデータを公開していただきました。また、病院に勤務する職員のワクチン接種等も示されとてもわかりやすくお話をしてくださいました。
デルタ株の時と比較し、オミクロン株に変異した頃はワクチン接種が進んできており、感染者に対する重傷者数は減っており、ワクチンの有効性が認められているとの事です。現在のBA4/BA5においても、COVIDー19に対する現在のワクチンでは、有効性が低くなっているものの、ワクチン未接種の方と比べ重症化率は格段に減ることから、ワクチンは接種する方が望ましいとの見解でした。
私は60歳未満ではありますが、高血圧がある事から4回目の接種券が届きました。1・2回目の副反応は三角筋の筋肉痛だけでしたが、3回目は筋肉痛に加え全身の強い倦怠感が2日続き4回目はどうしようか悩んでいたところでしたので、この講義を聴き接種する方向に気持ちが傾きました。
午後の講演は、昨年に引き続き、理学療法士 松本元成先生による「肩及び上肢の関節と筋肉の作用 スポーツトレーナーの実技指導」を受講しました。
肩関節(肩甲上腕関節/肩鎖関節/)を形成する骨や腱・筋や関節包の解剖学をおさらいし、屈曲伸展・外転内転・外旋内旋等の可動範囲や言語の共有を確認し、肩の痛みが起こる原因やテスト法・アプローチのかけ方を懇切丁寧に教えていただきました。
松本先生が務めている病院では、関節包の癒着により可動域が狭くなっている患者さんの中には、頸椎に麻酔薬を打ち癒着部を無理矢理剥がす治療をする事があるそうです。癒着を剥がすときは「バリバリ」と凄い音がするので少し怖いとおっしゃっていました。
胸郭出口症候群の検査法では、私が学生の時に習ったライトテストやエデンテストは血管性のテストで、痛みを起こす原因の90パーセントが神経由来であることから優先順位としてルーステストが多く用いられている事を知りました。このルーステストの知識を得ただけでも夏期大学講座を受講して良かったと思います。
経済的に厳しい時だからこそ、一つでも多くの知識や技術を身に付ける事が大切だと思いますので、お一人でも多くのご参加をお待ちしております。
Ⅱ.夏期大学講座2日目報告:垂水地区 宇仁菅一郎
メインテーマに「ニーズにあった鍼灸マッサージ師を目指して」を掲げ、2日目の講演が第186回学術講演会として、8月7日(日)兵庫県民会館3階にて開催されました。
この日の2講座は、昨年好評のため引き続いての講演でした。
まず午前は、関西医療大学 鍼灸学部教授 谷 万喜子先生より「ジストニアに対する鍼灸治療(主に鍼治療)その2」と題してご講演いただきました。
1時間半のほとんどの内容が、昨年の復習を兼ねた内容で、後半それらの関連事例を実践として報告いただきました。
全体としてジストニアとは、その臨床症状の特徴、頸部ジストニアの治療とその効果等が話されました。わたし個人としても、パーキンソンの患者さんや趣味の音楽鑑賞で演奏家の方々に、このようなジストニアの原因症状のため戦いながら演奏をされておられる方などがいるので、とても身近なテーマとして聞かせていただきました。
ただ昨年と同じく、今回も午前中だけの限られた時間の中でのご講演でしたので、1度午後からの時間帯で、実際のモデル実技を交えながらのご講演をじっくりと伺いたいと思ったひとときでした。
午後は、宝塚医療大学 鍼灸学部教授 北小路博司先生より「男性更年期における鍼灸医療について」ご講演いただきました。
今回のこのテーマの症状は、近年の男性更年期障害による症状だけではなく、加齢に伴う男性ホルモンの低下により生じる様々な身体状況の悪化をさす、加齢男性性腺機能低下症候群「lOH(ロー)症候群」が提唱されているとのこと。
LOH症候群とは、まず、特に夜間の睡眠時勃起減退に代表される、機能の質と頻度知的活動や認知力、疲労感、抑鬱、短気などに伴う気分変調障害、睡眠障害、筋容量と筋力低下による除脂肪体重の減少、内臓脂肪の増加、体毛と皮膚の変化、骨減少症と骨粗鬆症に伴う骨量の低下と骨折リスクの増加。これらが兆候として表れるとのことです。
続いて勃起障害(ED)についてお話しされました。
鍼灸医学では、たんに勃起障害としてのみのEDととらえるのではなくて、男性更年期における障害の視点からEDをとらえることが必要であると言われました。
もう一つ、これらに関連して、造精機能障害に関しても触れられました。
後半の実技指導では、テーマに沿った講演の後、勃起障害や過活動膀胱などに対する治療のポイントをご指導いただきました。男性更年期の症状と関連する臓腑として、腎・脾・肝の変化が大きく関わっていると考えられると言われたこと。
治療穴としては、中りょう穴の治療の必須を語っておられたのが印象に残りました。
女性更年期を取り上げての講演は、今までにも何度かありましたが、今回は貴重な男性ならではのテーマでご講演いただけたことが良かったと思います。
自分自身もこれから向き合っていかなければならないとても大切な講演でした。
Ⅲ.夏期大学3日目 レポート:神戸地区 小川結子
メインテーマ「ニーズに合った鍼灸マッサージ師を目指して」に即して、午前は森之宮医療大学 鍼灸学科教授 尾﨑朋文先生による 講題「小児はりの概要と米山式小児はりの実際」を拝聴しました。
冒頭、5年前の読売巨人軍の沢村投手トレーナーによる「長胸神経麻痺」の話題に触れられ、「解剖学的に見て鍼で損傷は考えにくい。ひっかけるのも難しい。」と断言されました。刺鍼による有害事象報告例では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による化膿性肩関節炎や右頸部刺鍼直後の「血管迷走神経反応(VVR)」による心肺停止等大学病院では珍しくない事象や、鍼特有の運動鍼による折鍼事故、死亡気胸等がありました。
次に児童虐待の定義から小児はりの必要性を説かれ、虐待の裏には親の育児やストレスがあり、脳の発達が著しい3歳前後のイヤイヤ期が小児はり需要のピークということでした。治療は「健康管理法」と「病気の治療」に大別され、「健康管理法」では、かん虫等の小児神経症が中心で、旅行や運動会など行事前後に健康管理を行い、「病気の治療」では、夜尿症、てんかん、小児麻痺、気管支喘息、下痢便秘等を対症に鍼をしてリラックスさせよく寝かすと落ち着くとのことでした。最近ではスマホによる肩こりや、発達障害も多い。刺激量は「気持ちよい」を目標に腹5分目で済ませ、3回くらいで治す気持ちで行うとよい。やりすぎると刺激オーバーでぐったりして発熱することが多いとのことでした。
治効理論では、赤ちゃん猿の実験を例に挙げられ、母猿から隔離し、母の形をした毛布状のものと哺乳瓶が突き出ている金網状のものを並べて置いた場合、赤ちゃん猿は毛布の方にしがみつくという実験結果から「触れることの重要性」を説かれ、小児鍼学会でもスキンタッチを推奨しているとのことでした。症例「夜尿症」では、失敗から発生する家族の言動ストレスによって自信喪失し失敗の悪循環を引き起こすため、母と子の自信を取り戻し、ストレスを取り除くことが解決策であり、普及活動でも保育園等へ鍼灸師が出向き、園長、保育士、保護者の理解を得ることが必要である。よって、「鍼灸のかたち」は、
1.鍼灸での有害事象の防止 2.子供の笑顔のために 子供元気、お母さん元気 として講演を締めくくられました。
実技では、小児の診方として、まず頭をさわり、眼瞼結膜を診る、頸部リンパ触診しながら食事や排せつを問診し、リンパが腫れていたら「口開けてあーんと言って」と喉の奥を診て、聴診器を当て「吸って、吐いて」を促す。次に「右手を出して」と腕を支え、大腸経から肺経、胸部へと呼吸器にアプローチし、前傾させて背部、肩甲間部、項部、頭部へと接触鍼をされました。鍼の使い方は、尖は2点間を刺激し、面は1秒間に5㎝移動する意識で行うとのことでした。
質疑応答では、会場から「世間ではベビーマッサージが普及しており、小児はりは未知である為、鍼灸師会の方で普及活動を積極的に行うべきでは?」との意見が出されました。核家族化が進んだ日本では、孤独な育児がストレスを生み子供への虐待に繋がっており、毎日のように報道を聞き心が痛みます。小児はりで親と子が幸せに暮らせるのなら、私ももっと小児はりを積極的に取り入れていきたいですし、一人の力は小さいので、鍼灸師会全体で普及活動を行う必要性を改めて認識しました。
午後は、明治国際医療大学鍼灸学部教授 伊藤和憲先生の講題「今日からはじめる養生学」を拝聴しました。メディアでもご活躍されている伊藤先生の大変スピーディーで迫力のあるお声に会場が包まれ、非常に情報量の多い熱い講演でした。
健康であるためには、セルフコンディショニングが大切で、健康になるための環境づくりが必要。「セルフケア」=症状を治療するための方法と「セルフマネージ」=悪化させないためのコントロール。さらには健康的に美しくなるため。を合わせて「養生」だとし、季節や習慣と関連した生活様式を日本人は昔から二十四節気と七十二候に従って取り入れてきた。親の価値観は子供たちに伝わっていく。このお話を拝聴しながら大正生まれの亡き祖母の言葉が次々と蘇ってきました。よって、鍼灸師として四季折々にケアを伝えることは素敵なことであると伊藤先生は説かれました。また、私の辞書には「ひとは自分の居場所があれば幸せに生きていける」とあります。伊藤先生も同じく「居場所の設定」が必要で、健康になるための場所(doing)=意見を持たないといけない所と、健康でいるための場所(being)=意見を持たなくてもいられる所の二つに分けて考えておられました。そして、健康になるための場所を伊藤先生自らが企画されており、京都府美山町の過疎地を活用し「森の養生場」として養生学を学び触れ合える場所づくりをされているとのことでした。さらには各市と連携して「湯治場構想」を掲げ、鹿児島県、京都府、奈良県、北海道に養生場の開発を考えておられるとのことでした。
このように信念を貫き多岐に亘ってご活躍されている伊藤先生のご講演を拝聴し、鍼灸師として、自らが活躍する場所を切り拓き、つくっていく必要があると確信しました。
今年度も夏期大学に出席し、日々の臨床では学びきれない知識を得ることができました。個人としても鍼灸師会としても課題山積ですが、力のある限り精進していきたいと思います。